愛知県は在留外国人の人口が日本全体でみても非常に高く、近年はその傾向がさらに加速しています。
その背景は在留外国人にとっての労働環境と生活環境の良さが理由となっているようです。

今回は愛知県に在留外国人が多い理由となっている、さまざまな労働環境や生活環境に関する支援制度について解説します。

愛知県にはどれくらいの在留外国人がいるのか

実際のところ、愛知県にはどれくらい在留外国人がいるのでしょうか。

官公庁が発表している最新の情報によると、ここ数年のあいだにも在留外国人の数はどんどん増えており、総人口に占める割合も増加しています。
また出身地別でみても、これまであまり多くなかった地域や国から来日して在留するひとも増えているようです。

以降では在留外国人の人数や、出身国別の状況などを詳しくみていきましょう。

データでみると? 東京についで2位!?

愛知県のホームページによると、2023年6月末における愛知県内の外国人住民数は297,248人で、県内での外国人住民数の割合は3.97%です。昨年は3.83%でしたので1年で0.14%増えていることになります。

国別にみるとブラジルが61,006人で、全体の20.5%でトップです。全国的にここまでブラジル人が多い土地は珍しいといえます。
ベトナムが53,041人(17.8%)、中国が44,739人(15.1%)、フィリピンが43,228人(14.5%)、韓国・朝鮮が28,553人(9.6%)、ネパールが13,908人(4.7%)とつづいています。

愛知県に外国人が多い理由は・・・?

愛知県に在留外国人が多い理由は大きくふたつあります。
それは労働環境と生活環境の問題です。
まずは労働環境として、最低賃金の高さがあげられます。
愛知県労働局のHPによると、令和5年10月1日時点では愛知県の最低賃金は1,027円。

これは全国でも東京、神奈川、大阪、埼玉についで第5位の高賃金です。
さらに外国人受け入れに前向きな、トヨタ系などの製造業が中心の商圏となっているため、就職もしやすいのが大きな理由です。

それから生活環境としても、愛知県は在留外国人が生活しやすいように、さまざまな制度が充実していることでもよく知られています。
文化共生や日本語教育に関わるものから、生活支援に関わるものまでいろいろな制度があるのです。

労働環境と生活環境に関する充実した制度があるので、多くの在留外国人が愛知県に居住しているのです。

愛知県が取り組む在留外国人のサポートとは

愛知県はさまざまな国々からやってくる外国人の文化的多様性に対応するため、多くの対策や支援に取り組んでいます。
とくに「あいち多文化共生推進プラン」「在留外国人への日本語教育の充実」「在留外国人への生活支援」などの取り組みを行っているため、全国的にみても支援が充実している印象を与えています。

以下では、それぞれの取り組みについて見ていきましょう。

あいち多文化共生推進プランとは

あいち多文化共生推進プランは、愛知県によって2008年3月に策定された「多文化共生社会の形成による豊かで活力ある地域づくり」のためのプランです。
現在では「第4次あいち多文化共生推進プラン」が策定されており、長く多文化共生のプロジェクトが進行していることがわかります。

近年は少子高齢化にともなう就労人口の減少や、進展するグローバル化によって、日本国内の外国人就労者が増加しています。

その中で永住資格や日本国籍などを取得する人が増加、来日した第一世代だけでなく、日本で生まれ育ち仕事に就く第二世代の外国人も増えています。そんな多様な文化や価値観を認め合い、ともに学び、働き、安心して暮らせる多文化共生を目指した取り組みとして「あいち多文化共生推進プラン」は策定されました。

具体的には、国際交流協会、大学、NPOなどと連携を取りながらの啓蒙イベントの開催や、多文化ソーシャルワーカーの養成などの取り組みがなされています。

具体的な施策としては、以下のような「大項目」と「中項目」を設けて、それぞれを達成するためのこまかな施策が行われています。

大項目中項目
コミュニーケーション支援日本語教育の推進
行政、生活情報の多言語化
生活支援相談体制の整備
生活支援の充実
防災、防犯、交通、安全対策の推進
医療に関する多言語対応の促進
意識啓発と社会参画支援県全体の意識づくり
地域における交流の促進
地域活性化の推進やグローバル化への対応外国人県民との連携・協働による地域活性化の推進・グローバル化への対応

日本語教育の充実

学校

愛知県では、在留外国人のための「日本語教育に関する制度」が非常に充実しています。

これは日本に長く滞在して、永住権を得る外国人が増える傾向にある中で、地域社会に参画していくためには言語の壁を取り払う必要があると県が考えているためです。
在留外国人の日本語習得支援としては、「公益財団法人愛知県国際交流協会」を中心とした活動が盛んに行われています。

この団体は愛知県と地元経済界とが共同で創設した「日本語学習支援基金」をもとに創設されました。活動のおもな目的は、外国人児童生徒の日本語学習促進のための環境を整備することです。

将来的に外国人が地域社会の一員として活躍していけるように、日本語を中心とした学習支援は非常に大切です。

このようなアクションは行政だけではなく、地域のボランティアによる日本語教室の開講が進むなど、官民一体となった活動にまで広がりをみせています。

生活支援はこんなに充実している

愛知県では在外国人に対する生活支援についても積極的です。

たとえば先述の協会では、あいち多文化共生センターで「多文化ソーシャルワーカー」による外国人県民の生活相談に多言語対応(ポルトガル語、スペイン語、英語、中国語、タガログ語、ベトナム語など10か国語以上)しており、また国際交流に関する情報も提供しています。

そのほか、NPO法人名古屋外国人強制支援協会などの団体では「入管時の資料作成補助」や「通訳」「日常生活や病気の際の通訳補助」などのサービスも充実しています。

また在留外国人や児童への日本語教育を通じて、日本語、文化、習慣、法律などを身につけるための補助もしています。

愛知県はこのような活動を促進するため「外国人児童生徒日本語教育支援補助金」など、NPO法人が必要な経費の一部を助成するなど、適切な予算組みを行うことで活動支援を行なっています。

「外国人労働者の適正雇用と日本社会への適応を促進するための憲章」とは

2008年1月に「外国人労働者の適正雇用と日本社会への適応を促進するための憲章」が制定されました。
この憲章は東海三県一市(愛知、岐阜、三重、名古屋市)と地元経済団体が協力して制定した、全国でも初めての試みです。

これまでも在住外国人と日本人住民が協力して、おたがいの文化や考え方などを理解し、尊重する多文化共生社会の実現を目指して、住民、NPO、企業、自治体が連携・協働して外国人の生活支援などを進めてきました。

この憲章は外国人労働者を取り巻く課題解決のため、経済団体や企業などと行政の連携をさらに強固にするものです。

外国人が日本社会への適応促進を測るための日本語教育、日本文化や慣習などの理解を深める機会の提供、彼らの家族が地域住民と共生できる地域社会参画の機会を作ること、子どもの社会的自立をはかるための支援など、6つの項目を文章化して憲章(つまり取り決め)にしています。

愛知県の外国人への取り組みは理解できましたか?

愛知県の在留外国人の数は年々増加しており、総人口に占める割合も増しています。
そのため愛知県としても、住民、NPO団体、経済団体、企業などと連携しながら在留外国人と日本人との共生に向けた取り組みを実施しています。

このような取り組みが多く行われることで、愛知県は在留外国人にとって労働環境、生活環境の両面において充実しており、全国で2位の在留外国人数となっています。