近年、労働不足が深刻化し外国人採用に消極的だった企業も採用を検討し始めています。しかし、実際に外国人を採用するとなると、就労ビザの申請手続きや外国人がすでに持っているビザが信用できるものか分からず、不安になる採用担当の方も多いことでしょう。

そこで今回は、外国人の「就労ビザ」申請について、全体の流れや必要な書類など詳しく解説していきます。

外国人の就労ビザ申請の基礎教えます!

外国人が日本に滞在するには、在留資格のうちのいずれかを取得しなければなりません。そのなかで就労を目的としたものが「就労ビザ」です。つまり、就労に制限がない定住者や永住者を除いた外国人を対象とした「就労可能な在留資格」ということになります。

「ビザ」と「在留資格」は混同されがちですが、「ビザ」は在外公館が発行するもので、外国人は「ビザ」に記載された活動を日本で行うために入国を許可されます。一方、「在留資格」とは、日本入国後に滞在し続けるための資格を指すのです。

入国の際に保持するビザで上陸が許可されると、日本に90日以上滞在する外国人には、外交、公用を除いて在留資格や就労の可否、在留可能期間などが記載された「在留カード」が交付されます。

就労ビザ(就労可能な在留資格)は以下の19種類です。

  1. 外交:外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等及びその家族
  2. 公用:外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等及びその家族
  3. 教授:大学教授等
  4. 芸術:作曲家、画家、著述家等
  5. 宗教:外国の宗教団体から派遣される宣教師等
  6. 報道:外国の報道機関の記者、カメラマン
  7. 経営・管理:企業等の経営者・管理者等
  8. 法律・会計業務:企業等の経営者・ 管理者:弁護士、公認会計士等
  9. 医療:医師、歯科医師、 看護師
  10. 研究:政府関係機関や私 企業等の研究者
  11. 教育:中学校・高等学校等の語学教師等
  12. 技術・人文知識・国際業務:機械工学等の技術 者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等
  13. 企業内転勤:外国の事業所から の転勤者
  14. 介護:介護福祉士
  15. 興行:俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等
  16. 技能:外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等
  17. 技能実習:技能実習生
  18. 高度専門職:ポイント制による高度人材
  19. 特定技能:特定産業分野に属する熟練した技能や知識、経験を要する従事者(2019年4月施行)

<参考>

在留資格一覧表(平成30年8月現在)出入国在留管理庁

在留資格「特定技能」について 法務省

外国人の就労ビザ申請の流れとは?

外国人を採用する際、海外から外国人を招く場合とすでに日本にいる外国人を採用する場合とでは手続きが異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。

<外国人採用の手続きの流れ>

  1. 在留資格の確認
  2. 雇用契約締結
  3. 出入国在留管理局へ「就労ビザ」の申請
  4. 申請が承認され次第、正式に雇用

在留資格の確認

外国人を採用する際、まずしなければならないのが「在留資格」の確認です。在留資格は外国人が持つ「在留カード」を提示してもらえば簡単に確認できます。特別永住者を除いて、在留カードを所持しない外国人を雇い入れることは原則としてできないので注意しましょう。

在留資格をすでに所持している場合であっても、「雇用後の業務が在留資格の範囲内の業務か」、「在留期間を過ぎていないか」、なども確認する必要があります。業務内容が異なる場合は、雇用後の業務に適した資格を取得するため、「在留資格変更許可申請」が必須となる場合もあるのです。また、海外在住の外国人が新たに在留資格を取得する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」をすることになるので合わせて確認しましょう。

雇用契約締結

出入国在留管理局(以下「入管」と言う)へ就労ビザを申請する前に、当該外国人と雇用契約を締結します。なぜなら、申請時に当該外国人との「雇用契約書」あるいは「労働条件通知書」などを提出するからです。外国人が日本で就労する際、日本人と同様に労働関連の法律が適用されるので、法令に従い、かつ外国人が理解できる言語で作られた雇用契約書で契約を交わす必要性もあるので注意しましょう。

入管へ「就労ビザ」の申請

雇用契約締結後は、企業の所在地を管轄する入管に「在留資格変更許可申請」あるいは「在留資格認定証明書交付申請」をしましょう。出入国在留管理局では、申請した在留資格の要件を満たしているかが審査されるため、当該外国人の学歴・実務経験などが申請した在留資格に合致していなければなりません。また、雇用主である企業も事業内容や規模などがわかる書類を提出し、外国人採用が可能なことを証明する場合もあります。

申請が承認され次第、正式に雇用

就労ビザの申請が承認され、許可されれば、企業は当該外国人を正式に雇用できます。正式に雇用が決まったら、早めに外国人に通達しましょう。その後も外国人は住所を変更したり、働き先を届け出たりとしなければならないので、そうすることによって早めに働き始めることが可能となります。

また雇用後に制作する、雇用契約書に関しては、日本語のみならず英語もしくは当該外国人の母国語で作成すると、後のトラブルを防ぐことができます。詳しくはこちらの記事をご覧ください↓↓

外国人の雇用契約書で絶対に押さえたい12のポイント

海外から雇用する外国人の就労ビザ申請は?

外国人を海外から招いて雇用する場合の手続きについて解説します。

外国人を海外から招いて雇用する場合の流れ

  1. 就労ビザ取得の可能性を確認
  2. 雇用契約締結
  3. 企業側が「在留資格認定証明書」の交付を申請
  4. 在留資格認定証明書を海外在住の外国人に送付
  5. 当該外国人が在外公館で査証を申請
  6. 査証発行後、当該外国人が来日

就労ビザ取得の可能性を確認

入管法にて定められた19種の就労ビザの取得条件を確認し、ビザ取得の可能性を検討しましょう。ここで確認を怠ると、取得できなかったり、申請が長引く可能性が出てきます。外国人労働者と十分に確認することがオススメです。

雇用契約締結

雇用後の賃金をはじめとする労働条件等を当該外国人と相談の上、就労ビザ申請に必要となる雇用契約を書面により締結します。日本語の契約書だけでなく、外国人が理解できる言語の契約書も作成しましょう。そうすることで後々のトラブルが防げます。

実際に、外国人が考えていた労働内容と、雇用側が考えていたものが異なり、相互確認が取れていなかったために外国人がすぐやめてしまったという例もあります。この契約書は、外国人との相互確認のタイミングでもあるため、契約書を渡してから不明点などを聞きだしてみるのも良いかもしれません。

企業側が「在留資格認定証明書」の交付を申請

企業担当者の所在地を管轄する入管に「在留資格認定証明書」の交付を申請します。海外在住者を招くために必要な書類で、入管から日本への上陸許可が審査されたことを証明するものです。就労ビザ取得がスムーズになるので、多くの企業が同証明書の交付を申請し、就労ビザを取得しています。

この申請には時間がかかることもあるため、後回しにはせず、早めに行いましょう。複雑に感じるようでしたら、申請代行サービスや行政書士に相談をしてみましょう。

在留資格認定証明書を海外在住の外国人に送付

交付された「在留資格認定証明書」を海外在住の外国人に送付。その後は、当該外国人の作業になります。外国人も日本に来て他にも様々な作業に追われている可能性がありますので、送付後もそれで終わりとせずリマインドしてあげましょう。

その後記入した「在留資格認定証明書」と必要書類を持参し、当該外国人は日本の在外公館へ行き、査証を申請する必要があります。ここも詳しく説明をしてあげると親切です。

査証発行後、当該外国人が来日

空港

査証が発行されれば、当該外国人は日本へ来て就労できます。ただし、「在留資格認定証明書」の有効期限は発行から3ヶ月となっているので、その期間内に来日しなければなりません。期日を過ぎると効力が失われ入国できなくなるので注意しましょう。

国内にいる外国人の就労ビザ申請は?

次に、すでに日本にいる外国人を雇用する場合の手続きについて解説します。

国内にいる外国人を雇用する場合の流れ

  1. 「在留資格」の確認
  2. 雇用契約締結
  3. 必要に応じて「在留資格変更許可」申請
  4.  雇用後の各種届出

「在留資格」の確認

採用する外国人の「在留資格」が、採用後の職種や業務内容の範囲内であるかを確認します。ここで注意が必要であるポイントは「制限付き就労可能ビザ」です。

たとえば、「留学ビザ」ですと、資格外活動許可が必要であり、さらに労働可能時間が1週間に28時間以内という制限が付きます。企業によってはこれを超えてしまい、人事担当の方が罰せられることもあるので注意が必要です。他にも場合によっては、不法就労助長罪として、会社全体が罰せられることにもなりかねませんので十分注意が必要でしょう。

必要に応じた「在留資格変更許可」申請について

業務内容が保有する在留資格の範囲内でない場合、「在留資格変更許可」を申請しなければなりません。3つのケースに分けて解説します。

<ケース1>

当該外国人が所持する在留資格が、採用後の職種や業務内容の範囲内でる場合、在留資格に関する申請は特に必要ありません。しかし、採用後は入管やハローワークに届出をしなければなりません。

<ケース2>

当該外国人が所持する在留資格が、採用後の職種や業務内容の範囲外である場合、雇用する企業と当該外国人が協力して「在留資格変更許可」を申請します。

<ケース3>

留学生を新卒採用する場合、「留学ビザ」から「就労ビザ」へ変更しなければなりません。このケースでは、採用予定の外国人学生が、自身の住所地を管轄する入管に「在留資格変更許可」の申請をします。

雇用後の各種届出

企業は外国人採用後、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」をすることが義務付けられています。届出を怠ると、30万円以下の罰金が科されるので注意が必要です。また、当該外国人は契約終了と新契約締結について、入管に「契約機関に関する届出」を提出しなければならないため、企業側も指導するようにしましょう。

在留資格認定証明書に必要な書類とは??

「在留資格認定証明書」交付申請書類は滞在資格(就労ビザ)により異なるため、法務省のホームページを参照して、必要な書類を確認するようにしましょう。

在留資格認定証明書交付申請についての法務省のページはこちらです!

技術・人文知識・国際業務の場合

技術・人文知識・国際業務の場合についてここでは紹介していきます。

【共通書類カテゴリー1~4】

1.在留資格認定証明書交付申請書1通

2.申請前3ヶ月以内に撮影した写真1葉

3.返信用封筒(定型封筒に宛先を明記の上、392円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)1通

4.雇い入れ企業がどのカテゴリーに該当するのかを証明する文書

5.専門学校を卒業し、専門士又は高度専門士の称号を付与された者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明      する文書1通

【カテゴリー3~4】

6.雇用契約書など

7.申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書

8.登記事項証明書1通

9.事業内容を明らかにする資料

10.直近年度の決算文書の写し1通など

在留資格変更許可申請に必要な書類

在留資格変更許可の申請も滞在資格(就労ビザ)により申請書類が異なります。書式は下記の法務省ホームページよりダウンロードできます。

在留資格変更許可申請書はここからダウンロード!

在留資格変更許可申請に必要な書類

  1. 在留資格変更許可申請書1通
  2. 申請前3ヶ月以内に撮影した写真1葉
  3. 日本での活動内容に応じた資料
  4. 在留カードの提示
  5. 資格外活動許可書を提示
  6. 旅券又は在留資格証明書を提示 (旅券又は在留資格証明書を提示することができない場合、その理由を記載した理由書)

なお、代理人が申請する場合は、身分を証明する文書などの提示が求められます。

外国人の就労ビザ:申請から認可までの時間は?

入管に就労ビザ(就労可能な在留資格)を申請して認められるまでの期間は、おおよそ1ヶ月から3ヶ月となっています。すこし幅があるのは、時期や申請内容によるものです。書類の不備や追加書類の提出などを求められれば、認められるまでの時間はさらに長くなってしまうため、しっかり書類を揃えることが重要でしょう。

また、在留資格は申請して必ず審査を通過できるわけではありません。不許可の理由は、書類の不備や要件を満たしていないなどさまざまです。もし不許可になった場合は、その理由を調べて修正し、再度申請するようにしましょう。その際、ビザ申請代行サービスなどは頼れる存在ですので一度相談してみると良いでしょう。

外国人の就労ビザについて詳しくなりましたか?

外国人の就労ビザについて、申請の流れにスポットを当てて解説しました。就労ビザの種類により申請書類や必要書類が異なり、複雑に感じるかもしれません。確かに、国内にいる外国人と海外にいる外国人とでは就労ビザの申請方法が異なり、すでに在留資格を有している外国人でも資格外の業務につくことができないなど、留意点が多いのも事実です。

しかし、今後ますます外国籍の人材に頼らざるを得ない日本の状況を考えると、なるべく早く就労ビザ申請の流れを把握しておくことが必要かもしれません。就労ビザの申請に時間を費やせない、あるいは法律に抵触することが心配だという担当者は、資格を持つ行政書士などの専門家への相談を検討してみてはいかがでしょう。

参考

「外国人雇用はルールを守って適正に」厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク(2017年4月1日)

『「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!』厚生労働省2019年8月28日閲覧

「在留資格認定証明書交付申請」法務省 2019年8月28日閲覧

「在留資格変更許可申請」法務省 2019年8月28日閲覧

「契約機関に関する届出」法務省 2019年8月28日閲覧