介護分野での深刻な人手不足が社会問題とされる中、政府は解決策として、外国人労働者の職種割合1位を「介護」とし、約6万人規模の人材の受け入れを検討しています。しかし介護の現場では、採用方法や就労資格、注意点などに対する理解が追い付かず、外国人労働者の受け入れに不安の声が広がっているのも事実です。

そこでこの記事では、実際に外国人労働者を介護職員として、事業所に受け入れる際の制度から注意点までを解説します。

外国人採用:介護職の受け入れ制度をチェック

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一口に外国人労働者の介護職受け入れ制度といっても所有する在留資格ごとに大きく分けて4つのルートがあり、雇用期間や担当業務、就労目的などにそれぞれ違いがあります。➀在留資格「介護」、②EPAに基づく雇用、③技能実習生、④特定技能の4つに枝分かれする在留資格は一般的に、就労ビザと総称されることが多く、制度の理解に混乱を招きがちです。

ここでは、在留資格ごとに違いを解説します。

制度➀在留資格の「介護」

在留資格「介護」は、3種類の中で最も就労に特化した制度で、専門学校を卒業して介護福祉士の資格を取得した留学生が、日本で就職することを目的としています。現段階において、最も人手不足の解決につながると期待されており、受け入れ国に制限がなく、EPAや技能実習生のように就労期間・携わる業務などに複雑な制約もありません。

唯一の懸念事項は、採用を仲介してくれる団体がいないことです。事業者は各自で求人を出し、採用活動を行わなければなりません。基本的な採用フローは変わりませんが、外国人留学生として入国していることやその後、在留資格「介護」を得るために必要な条件を満たしているかも確かめる必要があります。

制度②EPAに基づく雇用

外国人介護士とおばあちゃん

EPA(経済連携協定)は、インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済活動の連携を強化する観点から実施しており、介護分野の労働力不足への対応策として行うものではありません。日本の介護施設で4年間、就労・研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指すことを目的としています。そのため、受入れ機関(施設)は国家資格の取得を目標とした適切な研修を実施することが必要です。国際厚生事業団(JICWELS)が唯一の受入れ調整機関とされており、審査を通ると事業所への受け入れが許されます。

就労期間に制限が設けられているEPAですが、介護福祉士の資格を取得後は就労期間の更新に制限がなく、長期にわたり勤務できるようになります。しかし日本に定着し、優秀な介護の担い手として働き続けてくれるかは別問題です。

介護技術の向上を主な目的として来日している候補生もいれば、出稼ぎ感覚で来日している候補生がいるのも現実で、雇用の安定化という面での課題は解決されていません。

制度③技能実習生

技能実習(介護)制度の目的は、実習生が自国では身につけることができない技能を日本で学び、やがてそれを持ち帰って自分の国で役立てることにあります。従ってEPAと同様に、介護分野の労働力不足への対応策として行うものではありません。

学習に重きを置いていることから、訪問系の業務に対する制限があったり、就労期間は3年だったりと、3種類の制度の中で一番制約が多い在留資格です。

実習生であるがゆえに業務内容や就労規則に細かい規定がありますが、受け入れ先との認識の違いから、トラブルや失踪といった事例があるのも事実です。しかし、「しっかりと技能を身に付け、自分の国の人の役に立ちたい」といった目的意識をはっきりと持った実習生たちなので、職場の雰囲気が良くなったという報告もあります。

外国人採用:介護職で雇うには

高齢外国人の集会

外国人採用においては、基本的な採用の流れに加えて在留資格やビザの確認、資格取得に必要な書類の作成など、例外的な対応が発生します。ここでは、外国人留学生が在留資格「介護」を取得して就労するケースを軸に、その手順をまとめました。

外国人の介護職を雇うためには?

在留資格「介護」には、就職をあっせんする公的機関がないため、事業所は就職情報サイトやハローワークに求人情報を掲載し、募集する必要があります。面接で確認する主なポイントは日本人の採用面接と大きく変わりませんが、現在の在留資格や、在留資格「介護」を取得するために必要な条件・経歴などを満たしているかは必ず確認しましょう。

採用が決定したら、業務内容や給与の労働条件を記した内定通知書もしくは雇用契約書を作成します。これらは在留資格を「留学」から「介護」へ変更する手続きの際に必要となる書類です。また一般的に内定通知書には、不法就労を避けるための手段として「在留資格が許可されない場合、内定は無効とする」という条件を書き加えましょう。

留学生の多くは在留資格の「留学」を取得していますが、介護職として就労する場合は、入社日までに「介護」へ変更してもらわなければなりません。変更手続きは留学生本人が行う必要があるので、人事部門の担当者は変更の有無を確認し、対応をお願いしましょう。中途採用の方で、すでに在留資格「介護」を取得している場合は変更不要です。

タブレットに留学の文字

ただし、所有する在留資格と新しい職場での業務内容に相違がないことを確認するために、入国管理局で審査を受けて、「就労資格証明書」の取得を義務付けてください。在留資格の活動内容と実際の業務が違うと判断されると不法就労とみなされ、事業所と労働者双方が罰せられる可能性があります。「就労資格証明書」を発行してもらうことで、在留資格の活動内容と業務内容に問題がないことを明確にしましょう。

最後は、入社前に給与や労働条件について説明を行います。特に、日本の社会保障や税制について知らない留学生も多いため、事前の説明が必要です。額面と手取り額の違いに理解がないことはトラブルの原因になるので、日本ならではの制度や仕組みについて説明し、理解を促しておきましょう。

外国人の介護職の担当業務って??

外国人の介護職員が実際に施設で担当する業務としては、食事介助が最も多く、口腔ケア、排泄介助、移動介助、入浴介助の順に続きます。これらの業務は全て日常生活にあたる部分であり、欠かすことのできない大切な業務です。しかし、入居者と密に接する必要があることから、言葉の問題や心に寄り添った対応ができるのかといったことを心配する、利用者家族の声も無視することはできません。

実際にはどの実習生も、言語に関しては入国資格として日本語能力試験に合格し、日常生活には問題ない会話スキルを習得しています。介護技能においても、自国で「4年制大学卒業及び介護士認定」を受けているなど、意識の高い優秀な人材であり、施設職員や利用者からの評価は高いです。

外国人の介護職を雇い入れる注意点は??

介護士が介護

外国人を採用する際、「介護」に関する就労ビザを取得していることが必須条件です。また、所有資格と業務内容が一致していないケースや在留期限を過ぎた者が就労した場合、「不法就労」とみなされ、雇用した事業主が罰せられる事態になりかねません。外国人が所有する在留資格が「介護」となっていること、期限、3種類の制度の違いを理解して、就労に際して間違いがないように注意しましょう。

そして、外国人労働者との文化の違いに理解がないと、思わぬトラブルに発展することもあります。寛容に接することや思いやる気持ちが重要です。

一般的なものはこちらに掲載しています。ご確認ください。

介護職の外国人採用について詳しくなりましたか?

外国人介護士

介護分野での人手不足が深刻さを増す中、高い技能を有する外国人留学生が脚光を浴びており、実際に介護の現場でも高い評価を得ています。特に外国人の介護職員が担当する業務は、食事介助や入浴介助など日常生活に関する部分が多いので、人員不足の解消に一役買っているのは事実です。

しかし、外国人留学生の受け入れは労働力不足の解消を目的としたものではありません。認識の違いから予想外のトラブルを招くことのないように、制度の基本的枠組みへの理解が大切です。実習生を支援するという姿勢がお互いの発展に向けて必要とされています。