企業に外国人を雇いたいなら、就労ビザを取得することがもとめられます。
もしビザなしの状態で働かせてしまうと「不法就労」となり、罰則があるため注意が必要です。
そこで就労ビザを習得するための審査の基準や期間などについて知りたい方も多いでしょう。

今回は就労ビザを取得するための審査基準、審査期間について解説いたします!

就労ビザについて知っておきたい基本

「そもそも就労ビザとは何なのか」を理解しておくことが大切でしょう。
もし就労ビザの漠然とした意味が想像できても、内容について詳しく説明できる人は少ないのではないでしょうか? まずは基本的な点について解説いたします。

就労ビザってなに?

「就労ビザ」とは審査をして、居住する国で働くことを認めた場合に与える査証のことです。

国の許可なく働くのは「不法就労」といわれています。
基本的に日本では外国人が90日以上滞在する場合にビザが必要で、日本で報酬を得る活動をする場合にはさらに「就労ビザ」を持つことがもとめられます。

就労ビザを取得すると「在留カードが発行」されます。
こちらはビザがあることを示すカードで、顔写真、氏名、ビザの種類や有効期限などが記載されています。

日本で発行している就労ビザの種類は下記の通りです。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能
  • 技能実習
  • 介護
  • 企業内転勤
  • 経営・管理
  • 技能
  • 興行
  • 教育
  • 研究医療
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 法律・会計事務
  • 教授

就労ビザ取得のための基準は?

就労ビザを取得するためには、国の審査をクリアしなければいけません。
審査ではさまざまな項目について確認されるため、しっかりと準備することがもとめられます。

では審査の基準についてご紹介いたします。

外国人の学歴

就労ビザ取得では外国人の学歴要件が定められています。
日本か外国の大学を卒業している」か、「日本の専門学校を卒業していること」がもとめられます。
したがって最終学歴が海外で高校卒業の人は、日本で就労ビザを取得するのは難しくなっています。

また学歴を確認する際には、卒業証明書を細かくチェックしましょう。
日本と外国では教育制度が異なっています。

たとえば日本では大学(University)は4年制が多いですが、海外では2年制や3年制の学校も「大学(University)」に分類されます。日本では2年制大学は短期大学(College)で、4年制大学とは区別しています。
また4年制の学校を卒業しているから「大学卒」と判断したのに、実際には専門学校というケースもあります。

海外では大学でひとつの履修科目のみを学んで「修了証が授与される」ことがあります。
こちらを卒業証明書と誤解するケースもあるため、気をつける必要があります。こうした修了証では日本での就労ビザ取得の学歴要件は満たせません。

審査のときに求められる学歴は「大学卒業あるいは大学と同等以上の教育を受けたこと」です。
したがって短期大学、大学、大学院を卒業していれば学歴要件を満たします。
また専門学校については「日本の学校を卒業した場合」のみ要件を満たし、海外の専門学校は認められません。

ただし専門学校の場合は卒業をして「専門士」という資格が授与されていることがもとめられます。なかには専門学校と名乗っているのに「専門士」が授与されない学校もあるため、この点にも注意しましょう。

外国人の学校で学んだ科目と職務の関連性

審査では単に学歴を調査されるだけではありません。
卒業した学校で学んだ内容が職務と関連があるかもチェックされます

就労ビザには数多くの種類があって、それぞれ仕事内容が明確に決められています。学校で学んだ科目と関連する種類の就労ビザを取得しなければいけません。

学校で学んだ科目を確認するためには、成績証明書や履修科目などの書類をチェックしましょう。
とくに専門学校や短期大学などの場合は、学校でどんなことを学んだのか、卒業証明書をチェックしても判断しにくいケースが多いです。

審査では「学校で学習したことと職務の関連について、書面で説明すること」がもとめられます。
就労ビザの審査はすべて書類審査で、口頭で説明することはできません。
事前に必要な書類は集めておきましょう。

たとえば海外で情報工学系の大学を卒業したなら、ITエンジニアなどの仕事で知識を生かせます。
もし情報工学系の学位を取得している外国人が、「日本で通訳業をしたい:と考えても学校で学んだことと職務との関連性が薄いです。
このケースでは審査に落ちる可能性が高いでしょう。

基本的に「専門課程で学んだこと」と「職務との関連性」が重視されます。
したがってその分野の単位をひとつ取得した程度では、「専門的に学んだとはいえない」と判定されます。

就職先の会社と外国人との間で安定的な雇用契約が結ばれていること

審査では雇用先の会社と、安定的な雇用契約を締結していることがもとめられます。
とくに雇用の継続性がチェックされるため、この点には注意しましょう。
一般的には最低でも「1年以上の契約期間」があることが望ましいです。

基本的に審査においては、雇用形態が直接的に関係することはありません。
正社員として雇用するのではなく、契約社員や派遣社員として雇用する場合でも審査をクリアする可能性はあります。
ただし基本的には「正社員のほうが雇用の安定性や継続性がある」とみなされ、審査において有利になります。

雇用契約に関しては、審査後のトラブルを避けるためにも重要なポイントになります。事前にきちんと雇用契約の内容を説明しておきましょう。
海外と日本では働くうえでの習慣が異なっているため、日本の常識を押しつけるのはおすすめできません。もし曖昧な説明をして契約を結んでしまうと、たとえ就労ビザを取得できても後々の訴訟リスクがあります。

会社の経営状況

審査では雇用先の会社の経営状況がチェックされます。
具体的には会社に安定性、継続性、収益性があることがもとめられます。

これらを証明するための資料を用意して提出しましょう。会社の決算状況、資本金、資金の借入状況など、細かな部分までチェックされます。
もし決算が赤字であっても、かならず審査に落ちるわけではありません。事業がしっかりと行われていて、経営状況に回復の見込みがあることが証明できれば、審査に通る可能性はあります。

日本人と同等またはそれ以上の給与

就労ビザの審査では、外国人の給与についてもチェックされます。
外国人への給与は日本人と同等以上でなければいけません。この条件がないと企業は「人件費削減のために安い給料で外国人をたくさん雇用する」ことになります。
このような採用が行われると人道的な問題が起きかねないため、外国人に対しても日本人と同等以上の待遇である必要があるのです。

就労ビザの取得期間はどれぐらい?

就労ビザ取得の審査にかかる期間は、平均すると1ヶ月から3ヶ月程度
いつ申請したのか、どの種類の就労ビザを申請したかによって、審査にかかる期間は異なります。とくに1月から3月にかけては多くの企業が新入社員を迎える時期で、審査に時間がかかることがよく知られています

審査が長引く場合、追加資料の提出が求められることがあります。
基本的に就労ビザの審査は「すべて書面審査」で、詳しく内容を調べる必要がある場合には、追加の資料が求められます。

そのため申請する際には、できるだけ詳細な情報を伝えられるように資料を用意しましょう。

就労ビザ取得について理解が深まりましたか?

外国人を雇用するためには、就労ビザの取得が求められます。
審査では学歴や会社の経営状況や給与など、さまざまな項目がチェックされて時間もかかります。

しっかり事前にやるべきことを知っておくことが、外国人採用成功の鍵となることはまちがいありません。