ベトナム人を雇って海外業務を任せたい、貿易の知識のある優秀な人材を雇って活躍してもらいたい。そう考えている企業の人事担当者さまも少なくないことでしょう。しかし実際に雇う際には、まず気になるのが「言葉の壁」です。

ベトナム人はベトナム語を母国語としますが、日本人がコミュニケーションを取るとしたらやはり英語が主体になる傾向はあるでしょう。
では一般的なベトナム人の英語力はどの程度なのでしょうか?

この記事はそんな疑問に答える内容となっています。ぜひ記事を最後まで読んで、ベトナム人の英語力について知っていただければと思います。

ベトナム人は小さい頃から英語が話せる?

英語を母国語としない国民にとって、英語を身につける術は教育となることは明白でしょう。
言語の習得は幼いうちからはじめた方が有利」とはよくいわれていますが、教育をスタートしている年齢がポイントとなりそうです。

なかには幼い頃から英語の教育に力を入れ、幼稚園や小学生低学年でも一定レベル話せるようになる国も存在します。
ではベトナムでの教育事情はどうでしょうか?

もちろんベトナムでも英語教育がありますが、それはどのくらいの時期から、どのくらい力を入れて行われているのでしょう。

知っておきたいベトナムの基本情報

ベトナム社会主義共和国は、東南アジア位のインドシナ半島東部に位置する社会主義共和国制国家です。
首都はハノイで、人口は1億380万人と、1億人を突破して世界でも16位になっています。

第二次世界大戦後にホー・チ・ミンがベトナム民主共和国の独立を宣言するも、それをよく思わないフランスとの独立を勝ち取る戦争(インドシナ戦争)の後、アメリカの介入により南北に分裂します。
その後ベトナム戦争を経て泥沼化しましたが、1976年に南北が統一されて現在のかたちになりました。

公用語はベトナム語です。そのほか一部の地域で中国語、クメール語も利用され、長いフランス統治の時代の名残からフランス語を話す人もいます。
若年層に対しては英語の教育もなされています。

ベトナムの英語教育

近年、ベトナムでは英語教育に力を入れています。

ベトナムでは2011年から、小学3年生から英語の授業が必須となっています。
またハノイやホーチミンのなど大都市を中心に、日本でいう「塾」や「英会話学校」に当たる英語スクールが乱立しており、その国際化の勢いを感じさせます。

背景には貿易をはじめ、国際的なビジネスの場に立つことでの給与面での優遇があります。
成長が著しいベトナム経済ですが、国内ではまだまだ一次産業が中心。先進国中心に国外とつながりを持つことで、給与面でもかなりの差が出てきます。

ベトナムでも外資系企業に勤めることで、給与が2〜3倍ちがう状況になるため、日本以上に英語教育には熱が入っています。

ベトナム人の英語は訛りがある?

英語をネイティブとしない人にとって悩みの種となるのが「発音」です。
ある程度は仕方がないことですが、あまりに訛りが酷くなると、コミュニケーションに支障をきたす場合も出てきます。

では、ベトナム人の英語は日本人にとって聞きやすいものなのでしょうか?

日本人は日本語で育った場合、一般的には日本語の発音が英語にも影響してきます。同じことがベトナム人にも当てはまるのです。

最初は聞きづらいと思うケースも?

一般的には日本人がベトナム人の英語を聞いた時に、聞きづらいと思うことがあるでしょう。
主な理由として、単語末尾の音声をはっきりと発音しない点が挙げられます。

東南アジアの言語の特徴として、「末子音」があります。
これは単語末尾の(日本人からすると)非常に細かな部分を、s/d/t/kなどの音で分けるやり方です。

現地の人にとっては生まれた時から聞き慣れていて識別できますが、これが日本人にとってはうまく聞き取れません。
例えばfacebookと発音する場合、日本人がカタカナ読みをすると「フェイス・ブック」となりますが、ベトナム人の発音は「フェイ・ブッ」のように聞こえます。
慣れるまではおたがいの英語で意思疎通がうまくできないこともあるようです。

ベトナム人は他国への留学も多い?

語学を手っ取り早く習得する手段として、ベトナムでも留学を選ぶ人が増えています。
教育訓練省によると、2019年現在ベトナムの留学生は13万人ほど。

内訳としては、

  1. 日本      38,000人(29.2%)
  2. オーストラリア 31,000人 (23.8%)
  3. アメリカ    28,000人 (21.5%)
  4. 中国      13,000人 (10.0%)
  5. イギリス    11,000人 (8.4%)

となっており日本への留学がトップです。

しかし英語圏への留学という視点で見ると、オーストラリア、アメリカ、イギリスを合わせて全体の42.2%と人気が非常に高いです。

オーストラリアの留学生のうちベトナム人は何位? 日本人は?

オーストラリアでは中国人(15万3千人)、インド人(9万6千人)、ネパール人(5万5千人)の留学生が上位ですが、この後につづく4位がベトナム人(2万1千人)となっています。
日本からオーストラリアへの留学生は8千人あまり(全体の16位)であることと比較すると、ベトナムの英語学習への勢いが伺えます。

(参考:2022年1月〜10月の留学生数

日本とベトナムの英語力を比較すると?

各国の英語力を測る指標としては、EF英語能力指数というものがありますが、調査対象となる国を4つのカテゴリに分類して、順位づけしています。

このランキングを見てみると、

ベトナムは全体(調査結果が出た111カ国)の60位で、アジアでも24カ国中7位です。
日本は80位でアジアでも24カ国中14位ですので、日本よりもベトナムの方が現時点ですでに英語力が高いことがわかります。

日本で働くベトナム人は英語ペラペラ?

ベトナムにおいて英語教育・英語人気が非常に高まっていることがわかりました。
日本に働きにやってくるベトナム人は、高い英語力を持っているのでしょうか?

これについては「ケースによる」といわざるをえません。

日本で働く日本人でも英語がネイティブレベルの人はそう多くありません。
重要なのは、仕事で使う英語を最低限意思疎通レベルで備えているか? また、就く仕事によっても、必要な英語の運用能力に差が出てくるでしょう。

ごく頻繁に顧客と会うのか、メールを大量に捌かないといけないのか、さほど頻繁なコミュニケーションが必要ないのか、などでも変わってきます。
ここではベトナム人が多い職種をもとに、どの程度の英語力が必要なのかを考えていきます。

ベトナム人が多い職種は?

2022年末時点で、日本在留のベトナム人は48.9万人ほどです。そのうち、約3分の1(16万人程度)が技術実習生です。ついで「技術・人文知識・国際業務」が6万4千人、「特定活動」が6万人ほどとなっています。

外国人採用でよく聞く「技人国ビザ」ってなに? 取得する条件、注意点、永住権との関係について

工場での比較的単純な作業に従事するのであれば、仕事に関するひと通りの英語力で済み、高い能力は必要ありません。
しかしエンジニアやマーケターなどオフィスワークの仕事になると、上司や顧客のニーズをくみ取る必要があります。
最低でもTOEIC650点以上の英語力は必須でしょう。

近頃はIT関連のエンジニアを目指して訪日するベトナム人も増えていますが、こちらも同様に高い運用能力が必要です。これらの人材は、「読む・書く・聞く・話す」ことが一定レベルを超えている必要があり、実際に大卒のエリート層が多く含まれています。

そのほか小売・飲食・人材業界などで働くベトナム人がいますが、こちらはさほど高い英語運用能力は必要ないでしょう。

ベトナム人と働く時に気をつけること

ベトナム人のみならず、日本で外国人と働くときは相手の文化的な背景を尊重することが大切です。
とくに人によっては絶対にしてはいけない文化的タブーも存在します。
そんなタブーについてまとめた資料は、以下からダウンロードできます! ぜひ一度チェックしてみてください!

まとめ|ベトナム人と英語について理解が深まりましたか?

ベトナム人と英語について見てきました。

  • ベトナムの英語教育の環境
  • 幼い頃から英語を学んでいるか?
  • ベトナム人の英語発音の訛りについて
  • 留学生の数と留学先
  • 日本に働きに来るベトナム人とその英語力

以上のことについてイメージを掴んでいただけたでしょうか? ベトナムは長く社会主義政策が続いているため、発展がほかのアジア諸国とくらべて遅れたことは確かです。
しかしコロナになる前のGDPの伸び率は平均6〜7%で、今後の成長は著しいものがあります。

海外志向の強い若年層にとって、英語学習は今後も熱が増していくでしょう。
日本においても英語のできる優秀なベトナム人と一緒に働く機会は増えていきます。今回の記事で、ベトナム人の英語力について理解が少しでも深まれば幸いです。