近頃大きく話題になっている外国人採用。外国人採用に力を入れてきた企業も多いですが、介護の仕事でも外国人労働者が増えてきました。経済連携協定に基づいた日本の介護施設で就労や研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指す方々のことをEPA介護福祉士候補者といいます。

現在の受け入れ国はインドネシア・フィリピン・ベトナム。平成20年度より受け入れて平成29年度には752人もの方が受け入れられています。外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会は、こうした介護の現場で外国人労働者に働きやすい環境を作る事や介護の質の低下を防ぐ為に検討した方が良い事について項目をまとめて検討していますのでどういったものなのかを見てみましょう。

外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会をみる前に

外国人介護士

外国人介護人材の受入れの在り方に関する検討会について見る前に、介護の現状や介護現場における外国人労働者の受け入れは進んでいるのかについて先に確認してみて下さい。

介護の現状…人手不足なのか?

労働力人の推移

画像引用:厚生労働省ホームページ

29歳までの働いている方は平成2年に比べて平成29年では312万人減少。それに比べて60歳以上の方は倍近く増えています。このように少子高齢化により働いている方の年齢層も高齢化しています。そうなると、介護などの体力を使う仕事の現場では常に人手不足や若手不足という悩みは多くなるのは致し方ないですよね。

平均寿命も延びてきており介護をされる側もする側も年齢が上がってきていて老老介護とも言われています。また、結婚しない方も増えているので施設へ入りたい方や在宅で一人暮らしをする高齢者も増えてきています。

求人倍率

画像引用:厚生労働省ホームページ

人手不足で有効求人倍率は右肩上がりに増加。そんな中、外国人を採用している企業も増えてきておりコンビニエンスストアでは外国人店員も珍しくなくなりました。介護業界でも外国人労働者は大切な存在です。

特別養護老人ホームは安いので入所を希望する方も多いのですが飽きがなかなか無いのと人材が集まらなくて決められた職員の数を確保できない事も多いのです。終の住処と考えられてきた老人ホームですが、最近では閉鎖してしまう大変な事例も増えてきています。

閉鎖してしまうと住んでいた高齢者はどうなってしまうのでしょうか。入所者は住む所が無くなってしまったので次の施設などを探さなくてはいけません。このように閉鎖にまで追い込まれてしまうのは経営の仕方に問題があることも多いのですが、働いている方の負担も大きいのです。

常に人手不足で夜勤が何日も続く場合もあり、体力的にも精神的にも追い込まれやすい職場もあります。そんな介護業界では外国人労働者は無くてはならない存在になっており、今後も大切な労働力になるでしょう。

外国人の受け入れは進んでいるのか

先程説明したEPA介護職員の受け入れは平成20年度から始まっており、その受け入れ人数は年々増加。平成30年度までに4302人を受入れておりEPA介護職員は過去808箇所もの施設等で雇用されてきました。

平成31年1月1日ではEPA介護職員は677箇所の施設等において3165人が雇用されています。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで受け入れられています。

日本の介護事業所で働きたい外国人が日本の介護福祉士養成校に留学する場合もあり、入学者数は平成28年度では257人・平成29年度は591人・平成30年度は1142人とこちらも増加。介護職種の技能実習計画の申請件数は平成30年12月末で1516人分。そのうち946人分の認定が出ており、技能実習生として順次入国しています。

外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会とは

会議

介護業界での外国人を受け入れる事については様々な部分を検討しないと利用者や事業所、外国人にとって良い環境を築いていく事が難しいです。そういった部分をどうしていったら良いのかと検討するのが外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会。どういった事が話し合われているのか、決まった事等について見ていきましょう。

何が話し合われたのか

検討会では技能実習についての評価や事業所への聞き取り、EPA介護福祉士の就労範囲や受け入れ施設からのヒヤリング等について話し合われています。

EPA介護福祉士は平成20年より受け入れられていますが施設以外にも訪問系サービスを追加する事についても検討中です。介護福祉士になった外国人のさらなる活躍の為にもどうしたら良いのかも考えられていて検討会では事業所からの声をもとに今後の介護業界への外国人の受け入れに役立てていけるように課題を見つけて話し合われています。

決まったことは?

EPA介護福祉士について日本人の介護福祉士と同じく専門的知識や技術があると確認されており、就労では日本人と同様に適性に沿った業務に配置される事から専門職という観点で、介護福祉士としての就労範囲に制限を設けることはできないと考えられます。経験を積んでいきスキルを高めていくので就労範囲も活躍の場を広げていくことが適当でしょう。

ただし、訪問系サービスは外国人労働者の人権擁護等の観点から慎重に検討するべき、介護事業者が利用者と職員の状況を踏まえて判断すべきであるといった意見があり引き続き検討会において議論をおこなうことになりました。

介護における外国人採用の今とは

インドネシア・フィリピン・ベトナムからのEPA介護職員は、母国での学習経験や資格を持つ人や介護や看護の知識や経験に関して一定の要件を満たす外国人が日本語研修を受けてから入国します。研修の前後で介護事業所とのマッチングがされますが受け入れ人数には制限があるため全てをマッチングできる訳ではありません。

日本語能力はインドネシアとフィリピンはN5程度以上、ベトナムはN3以上で入国できて入国後に日本語や介護の基礎に関する研修を受けてから介護事業所で雇用。入国して4年目に介護福祉士の国家試験を受験して合格すれば在留期間を更新しながら永続的に働くことが可能。不合格なら帰国しなくてはいけません。

介護事業所とのマッチングはJICWELS(国際厚生事業団)が唯一の受入調整機関で双方の意思を尊重した採用が行われています。EPA介護職員を受け入れたい場合にはJICWELSの説明会に参加しましょう。ホームページを確認して受け入れパンフレットを見て要件を満たしているのかも確認しましょう。

介護の学校に留学している外国人は卒業時には介護福祉士資格があるので専門人材として活躍してくれます。在留資格の介護の期間は、本人が望めば繰り返し更新できるので永続的に働け、養成校の規則にもよりますが通学している時からアルバイトとしても雇用できる場合もあるのです。

入学要件の日本語の目安はN2程度以上。実際の入学要件や受入状況は養成校によって異なります。受入調整機関が無いので雇用事業者が自ら養成校と連携する等の自主的な採用活動が必要です。

外国人を雇用したい事業所は外国人雇用センターや求人広告、ハローワークや養成校に相談する事をおすすめします。

外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会について掴めましたか?

介護風景

外国人は介護の現場でも大変貴重な人材。外国人がもっと活躍していけるように日本人の介護福祉士と同じような扱いや仕事内容になるように検討会でもよく考えられています。事業所で外国人を雇用する場合には経験や日本語能力、外国人の宗教や人間性など細かい部分もお互いに相談し合い納得して雇用できるようにしなければいけません。訪問系サービスについては今後も検討していく課題。今後の外国人介護従業者にさらなる活躍の場が広がり、介護業界の人手不足や質の低下を防いでいく事が重要になります。

参考

資料 厚生労働省

「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」厚生労働省

「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」厚生労働省