現在では改正入管法の導入で、外国人受け入れの拡大が進んでいます。
それに伴って問題視されているのが、在留資格の取り消しです。

在留資格の取り消しといっても、身近に起こることがあまりないため、「在留資格の取り消しってよくあるの?」「取り消しになったらどうなってしまうの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は在留資格の取り消しについて、取り消しになった場合にどうなるのか、取り消しになるケースや注意点をくわしく説明します。

在留資格の取り消しはよくある?

外国人が日本に住むために必要になる在留資格。日本に在留する外国人はさまざまな理由で日本に来ており、その目的に応じて在留資格が与えられています。

では在留資格とは具体的にどんなものなのか、また取り消しになった場合はどうなるのか、年間の取り消し件数はどれくらいあるのかをみていきましょう。

 在留資格とは

在留資格は外国人が日本に入国・滞在するために必要な資格。
在留期間や在留中にできる活動は在留資格によって法で定められており、「就労ができるもの」と「就労ができないもの」があります。

2023年11月現在の在留資格は29種類あり、大きく分けて「活動資格」と「居住資格」に分類されます。

また在留資格の変更・在留期間の更新には、法務大臣への許可が必要です。
2週間から1ヶ月ほどで受理され、許可された場合には手数料が発生します。

「活動資格」と「居住資格」のちがいは?

活動資格」とは、外国人が定められた活動を行うことで日本に在留できる資格です。たとえば日本と公私の機関の契約による研究活動の指導をするのに必要な研究員など、本邦にとって必要だと認識された外国人に与えられる資格です。

居住資格」は、定められた地位や身分を有する者として日本に在留できる資格です。
これは永住者、定住者、日本人と結婚して日本人の配偶者となった外国人が与えられる資格。

取り消しになるとどうなるの?

日本に在留する外国人が虚偽の記載によりビザを不正に取得したり、在留資格に応じた活動を一定期間行っていなかった場合などには、「在留資格の取り消し」が行われます。

在留資格を取り消そうとする場合には、入国審査官による該当する外国人の意見の聴取が義務づけられています。意見の聴取の際、該当外国人は意見を述べたり、証拠の提出、資料の閲覧を要求ができます。
不正ではないことの主張や意見は、聴取でしか述べられません。

聴取が終了して在留資格の取り消しが決まると、即時強制退去、最大30日の決められた期間内に自主的に出国しなければいけません。さらに在留資格の取り消しをされた場合、一定期間は日本への再入国ができなくなってしまいます

本邦または本邦以外の国の法律に違反し、1年以上の懲役、禁錮またはこれらに相当する刑を処せられた外国人は永久に日本に上陸できません。

そのほか、在留資格を取り消しされた場合の上陸拒否期間は以下の通りです。

・違法薬物所持

上陸拒否された日から1年間

・強制退去

出国した日から5年間

・過去に強制退去により出国したリピーター

出国した日から10年

以上のように一度でも在留資格取り消しされてしまった場合、再入国するのにかなりの時間を要します
場合によっては永久に入国拒否となるケースもあります。

上陸拒否期間を経過しても、以前と同様に入国できるとは限りません。
過去に違反による退去や、出国した事実は残っているため、普通よりも入国審査が通りにくくなることは把握する必要があります。

 取り消し件数は年間でどのくらい?

出入国在留管理庁によると、令和4年に出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項にもとづく在留資格の取り消しをおこなった件数は1,125件でした。
これは前年にくらべて325件(40.6%)増加となっていますが、日本に来る外国人が増えていることを考えると、増えていくのはある意味では当然のことのようにも思えます。

在留資格別にみると、技能実習が約80%、次いで留学が14%、技術・人文知識・国際業務が2%となっています。

国籍では、多い順から「ベトナム(804件)」「中国(146件)」「カンボジア(53件)」となっています。

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在留資格が取り消しになるケースとは

昨今では改正入管法によって取り消し件数が増加。過去最多を記録しています。たくさんの種類がある在留資格では取り消しになるケースもさまざま。偽造されたケースや、在留資格を持っている外国人以外の人が原因のケースもあります。

では在留資格の取り消しが起こるのは、どのようなケースがあるのでしょうか? いくつかのケースをご紹介いたします。

ケース1:身分を偽った

在留資格が取り消しになるもっとも多いケースが「身分の偽り」です。たとえば日本の学校へ通うと偽って「留学」の在留資格で入国したが、実際は就労目的であった場合などが在留資格の取り消し対象となります。

就労目的で入国したあと、本来の就労目的とは異なる内容の就労をしていても同様に取り消しとなります。

また虚偽の結婚も取り消し対象です。
「日本人の配偶者」として虚偽の結婚で申請し、在留資格を得て日本で就労した場合、在留資格は取り消されます。

ケース2:書類が間違っていた

在留資格を持つ外国人以外のひとが、虚偽の書類を提出した場合にも在留資格の取り消し対象です。
たとえば技能実習の受け入れ先の企業が虚偽の研修計画書を作成・提出して、外国人実習生に上陸許可が受理された場合など。

書類を作成するときは、まちがいがないかしっかり確認する必要があります。

ケース3:在留資格に応じた活動をしていない

在留資格を所持している外国人が、正当な理由がないにもかかわらずその活動を3ヶ月以上行っていなかった場合は取り消しの対象になります。
ただし急に会社が倒産した場合など、次の就職に向けて就職活動をしっかり行っていれば「正当な理由」に当てはまります。
このような場合には取り消し対象にはなりません。

また日本に在留する場合は、法務大臣に滞在する住所を伝えることが義務づけられています。
そのため引っ越しなどで住所に変更があったにも関わらず、決められた期日までに伝達がなかった場合や、虚偽の住所を伝えていた場合にも在留資格取り消しになります。

ケース4:3ヶ月以上活動をしていない

正当な理由がないのに3ヶ月以上在留資格に該当する活動をしていない場合には、在留資格は取り消されます。
正当な理由とは、たとえば就職先の急な倒産で就職先を探している場合などがあります。

在留資格の取り消しについて詳しくなりましたか?

在留資格が取り消しになると、定められた期日までに「出国」あるいは「即時強制退去」しなくてはいけません。
出国後は日本に一定期間は渡れなくなり、再度在留資格を発行してもらうことが難しくなります。

外国人を雇用する際は、その外国人が持つ在留資格がどんな目的で発行されているのかをしっかり確認して在留資格に応じた活動をするように気をつけましょう!