外国人を採用する際、就労ビザ取得期間を把握していないと、業務開始に間に合わなくなってしまうかもしれません。そのような事態にならないために、ここでは就労ビザの申請期間について詳しく解説します。
就労ビザを持っていない外国人、あるいは就労ビザの変更・更新が必要な外国人の採用を検討している担当者は必見です!
目次
就労ビザ取得期間はどれくらい?

外国人が日本で働くためには「就労ビザ」が必要です。そして外国人を雇用する際には、ビザの申請期間に気をつけなければなりません。なぜなら、ビザの審査期間が一定ではないからです。
それは、出身国や年齢、ビザの種類が申請者により異なり、雇用企業の背景も異なるためです。つまり、出入国在留管理庁はそれぞれの背景と照らし合わせて審査しているということ。また、ビザの種類によっても申請期間が異なります。
就労ビザ「更新」の申請期間
就労ビザの「更新」とは、外国人労働者がすでに持っている就労ビザと同じ活動内容の業務を引き続き日本国内で行うための期間延長措置です。更新の申請は、在留期間が6ヶ月以上あれば満了日の3ヶ月前から行えます。
法務省の審査期間の統計データから、「更新」の審査期間を確認してみましょう。
<技術・人文知識・国際業務の更新>
年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和元年 | |
期間 | 10/1~12/31 | 1/1~3/31 | 4/1~6/30 | 7/1~9/30 |
在留審査処理期間(日数) | 28.0 | 25.3 | 32.9 | 31.4 |
四半期ごとの審査処理期間を在留資格「技術・人文知識・国際業務」で見てみると、25日から33日となっています。上記1年間の平均日数は29.4日となるため、更新の審査期間は1ヶ月前後と言えるでしょう。
法務省は「在留期間更新許可申請」で標準処理期間を「2週間~1ヶ月」としているため、長めに見積もっておいた方がいいかもしれません。
出典:法務省 在留審査処理期間
じっくり詳細編:7 在留期間更新申請等をした方の在留期間の特例
就労ビザ「変更」の申請期間

では次に、就労ビザ「変更」の申請期間について解説します。就労ビザの「変更」とは、すでに持っている就労ビザで定められている範囲外の活動をする際に必要な措置です。つまり、在留資格変更許可申請をするということで、留学生が日本国内で就職する場合も含まれます。このケースでは、留学ビザから就職後に担当する業務に即した就労ビザに変更する必要があるので注意しましょう。
「更新」と同様に、法務省の審査期間の統計データから、「変更」の審査期間を確認してみましょう。
<技術・人文知識・国際業務への変更>
年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和元年 | |
期間 | 10/1~12/31 | 1/1~3/31 | 4/1~6/30 | 7/1~9/30 |
在留審査処理期間(日数) | 31.1 | 45.7 | 38.1 | 41.8 |
四半期ごとの審査処理期間を在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更で見てみると、31日から46日となり、「更新」より長くかかることが分かります。上記1年間の平均日数は39.2日となるため、変更の審査期間は1ヶ月半前後と言えるでしょう。
また、時期によっても審査期間に差があるようです。1月から3月にかけて審査期間が長期化するのは、4月入社に向けて申請が増えるためだと考えられます。「更新」と同様に、法務省は「在留期間更新許可申請」で標準処理期間を「2週間~1ヶ月」としていますが、実際にはそれ以上かかるようなので、早めに申請した方がいいでしょう。
出典:法務省 在留審査処理期間
じっくり詳細編:7 在留期間更新申請等をした方の在留期間の特例
就労ビザ「認定(呼び寄せ)」の申請期間
次いで、就労ビザ「認定」の申請期間について解説します。認定申請とは、海外にいる外国人を呼び寄せる際に必要な措置です。この申請により「在留資格認定証明書」が交付され、当該外国人は在外日本公館に証明書を添付して査証申請をし、ビザの発給を受けます。
ビザ発給を受けた後は、日本国内の上陸港でパスポートとともにビザ、証明書を提出することで長期上陸が許可され、同時に在留カードが交付されます。これまでと同様に、法務省の審査期間の統計データから、認定の審査期間を確認してみましょう。
<技術・人文知識・国際業務の認定申請期間>
年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和元年 | |
期間 | 10/1~12/31 | 1/1~3/31 | 4/1~6/30 | 7/1~9/30 |
在留審査処理期間(日数) | 39.2 | 33.4 | 42.9 | 50.5 |
四半期ごとの審査処理期間を在留資格「技術・人文知識・国際業務」で見てみると、認定申請期間は33日から50日程度。上記1年間の平均日数は41.5日で、「変更」や「更新」より長くかかるのが特徴です。
法務省は「在留資格認定証明書交付申請」で標準処理期間を「1ヶ月~3ヶ月」としており、在留資格「経営・管理」では上記の期間で、85.1日→96.9日→122.2日→87.7日と3ヶ月前後となっています。一方、在留資格「教育」では、14.7日→16.8日→23.7日→24.9日と1ヶ月以内でした。
つまり、在留資格により審査期間に大きな差があるということです。そのため、外国人を採用する企業側は、それぞれの審査期間を把握しておく必要があります。
出典:法務省 在留審査処理期間
就労ビザ取得期間は状況によって大きく変わる?

先にも述べたように、就労ビザの取得期間は状況により大きく変わります。それはすでにお伝えしたように、個々人により背景が異なることが一因です。また、就労ビザの種類によっても異なります。
さらに、「更新」「変更」「認定」といった申請の種類によっても審査期間に差が生じるのが現状です。もちろん、就労先の企業の審査期間もまちまちでしょう。さらに、出入国在留管理庁の繁忙期となる年度末などには、申請の多さから審査期間も長期化します。以下が、就労ビザ取得期間が状況により変わる理由のまとめです。
<就労ビザ取得期間が状況により変わる理由>
- 本人や企業を取り巻く背景がそれぞれ違うため
- 申請の種類、在留資格の種類により審査期間が違うため
- 出入国在留管理庁の繁忙期が影響するため
ビザの申請が間に合わなかったら?

では、ビザの申請が間に合わなかったら、どうなるのでしょうか?
更新・変更の場合、在留期間内に許可が受けられるに越したことはありませんが、期間内に許可が下りなくても出国する必要はありません。これは入管法(出入国管理及び難民認定法)の特例措置によるもので、在留期間満了後も「処分がされるとき」または「在留期間の満了日から2ヶ月を経過する日」のいずれか早い日まで、引き続きこれまでの在留資格で在留できるからです。
要するに、ビザの更新あるいは変更の申請をしていれば不法残留になることはなく、満了日が過ぎても心配する必要はないということ。ただし、申請が許可されなかった場合は、直ちに出国しなければなりません。このような事態を招かないためにも、在留期間内に許可を受けられるよう早めに申請した方がいいでしょう。
また、更新あるいは変更の申請完了後には、在留カードの裏面右下に「在留資格更新/変更許可申請中」と押印されるので、申請後にスタンプが押されているかを確認してください。もちろん、ビザが下りる前に働かせれば「不法就労」になるので注意が必要です。
就労ビザの申請期間について詳しくなりましたか?

就労ビザの申請期間について、申請の種類別に詳しく解説しました。更新や変更をする際には在留期間満了日までに申請をすることで期間が2ヶ月延長されますが、2ヶ月で審査が終わらない場合もあり、また不許可になる場合もあるかもしれません。
そのため、申請は余裕を持って行う方が安心です。企業の採用担当者も就労ビザ取得期間を十分に理解し、採用活動を進めるのが賢明でしょう。