ここ数年間、「アフターコロナ」に入った日本の労働市場は、再び人手不足の問題が深刻化しています。

新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、飲食業、宿泊、ホテル業では一時的に衰退がおこり、人員削減が行われました。しかし、現在では需要が急回復したことで、またもや供給が追いつかなくなっているのです。

本記事では、現在どのような業界で人手不足が起こっているのかについての最新の動向と、解消するための取り組みや対策についてご紹介します!

人材不足の業界はどのように変化した?

アフターコロナ以降、「営業自粛」や「事業縮小」を余儀なくされ、多くの失業者を出した業界が再び顧客を取りもどし、人手不足に陥っています。代表的な例は飲食業です。

帝国データバンクによる調査では、飲食業界の非正規雇用について、コロナ禍の2021年では50%が人手不足であったものの、2023年最新の調査では、85.2%までその数値が上がり、業界トップを記録しています。

参考:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査

主な原因として、飲食店ではパート・アルバイトの非正規労働者が雇用者全体の7割以上を占めており、人の出入りが激しい業界であることが考えられます。また、観光客の復活にともなう、顧客の急増もかなり影響しているでしょう。

その対応策として回転寿司チェーン店などを始め、一部の店でIT化や自動化が進められてきました。しかし、接客業ではその場における柔軟な対応が求められることや、コストの面で、非正規労働者を中心とした労働環境を抜け出せずにいます。

人手不足が継続している業界は?

飲食業以外にも、人手不足の問題が広がり続けている業界は多くあります。

ここ数年間、人手不足は日本全体の問題として注目されていますが、いまだに状況は悪化しつづけています。

どのようなことが問題の背景としてあるのでしょうか? 業界ごとの現在の状況と、どのような取り組みがなされているかを紹介していきます。

宿泊・ホテル業界

宿泊・ホテル業界では、飲食業と同様に、アフターコロナの影響によって、大幅な人手不足がおこっています。帝国データバンクの調査によると、正社員の人手不足率が75.5%、非正社員が78%と、どちらも高い割合になっていることがわかっています。

その原因として考えられているのが、離職率の高さです。厚生労働省の発表した調査によると、宿泊・ホテル業界の入職率は23.5%なのに対し、離職率は全業界の中でもトップの25.6%となっています。

参考:厚生労働省 令和3年雇用動向調査結果の概況

対応策として、多くの宿泊施設では、デジタルツールの導入を行っています。例えば、自動チェックイン機や問い合わせ対応のAI化、清掃業務におけるロボットの活用があります。しかし、このような業務の自動化を進めるなかでも人手は足らず、観光客を中心とした宿泊者が増加する一方の状況が続いています。

建設業界

建設業界は、新型コロナウイルスの流行が雇用環境に与えた影響は少なく、コロナ後も依然として人手不足の状況が続いています。実際に、建設業就業者は2013年から2022年の10年間にかけて、20万人減少している状況です。

その中で、高齢化も進んでおり、総務省労働力の調査によると、2022年には現場の6人に1人が65歳以上となっています。

参考:総務省 労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約

また、建設業では、「現場作業」において人材派遣が認められておらず、建設業特有の規制も人手不足を解消する障壁となっていることがわかります。

近年では、若者による「危険で過酷な職場」だという印象を抱かれていることを踏まえ、業界全体としてイメージアップを試みるためのイベントや取り組みが行われています。その影響から、厚労省による雇用動向調査では、建設業に新たに入職する新規学卒者は増えていることがわかります。

加えて、外国人労働者を受け入れる動きも進んでおり、一例として、清水建設では国内外の外国人労働者がより働きやすい職場環境作りを目指し、人権尊重の取り組みを強化しています。

運送業界

運送業界でも、高齢化と需要の増加が進むなか、人手不足が深刻化しています。

総務省の調査によると、25〜34歳の労働者が1,151万人なのに対し、55〜64歳の労働者は1,235万人となっており、55歳以上の労働者が若年層をこえる現状があります。

近年では、オンラインショッピングや宅配サービスなどの利用がさらに広がり、細かい時間指定や当日・翌日配送のようなサービスが高度化したことにより、仕事と、働き手のギャップがより拡大しています。

また、テクノロジーによる自動化が進みづらい分野でもあります。
自動運転に限らず、運転貨物の荷下ろしなど、現場での効率化は途中段階と言えます。

人手不足を解消する方法として期待されてきた在留外国人の雇用ですが、運送業界では制度的な問題でなかなか進んでおらず、永住者や配偶者ビザの方に限るなど他業種に比べ、ハードルが高くなっています。

国土交通省は今年度中にも在留資格「特定技能」の対象業種に「自動車運送業」を追加する見込みだとしており、外国人労働者をドライバー職に受け入れる門戸は広がると考えられます。

人手不足を解消するための取り組みは?

少子高齢化等の社会問題が、人手不足の大きな要因になっていますが、実際にどんな対応を取っていけばよいのでしょうか。その対応策をご紹介いたします。

企業側が行える対策

①給与・雇用条件を見直す

なかなか人員が集まらないということであれば、今の条件に問題があるかもしれません。

特に、給与は人材を獲得するための重要な要素であり、多くの応募者が少なく、離職率の高い業種では、給与の低さが原因となっていることが継続的な調査によりわかっています。

給与を上げたり、待遇を見直すことはコストのかかる対策に見えますが、長期的にみると効果的であると言えます。モチベーションの高い人材を採用することができれば、離職率が下がり、人員不足を解消することにつながります。

②ITや技術で業務効率を改善する

人員で補填できない業務を技術で解決するのも一つの選択肢です。

看護や介護業では記録をアプリやシステム化、一部の運送業では、トラックへの積載を機械化するなど少しずつですが業務効率改善が図られています。

また、現場の負担が軽減されることで結果として定着率が上がることも期待できます。

③外国人労働者を採用する

近年、多くの業界で外国人労働者を積極的に受け入れる取り組みが進められています。

導入していない企業にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、一度社内でマニュアル化してしまえば、長期的に行える対応策と言えます。

また、アフターコロナにより、観光客が増えた今では、外国人労働者は貴重な人材といえ、求職意欲の高い在日外国人の方を採用していくのは、むしろ「効率的」とも言えます。

人手不足の現状についてわかりましたか?

アフターコロナの影響によって労働環境が大きく変化しましたが、人手不足の問題は変わらず広がり続けています。

業界によって問題の内容が異なっているため、適切な対応を取ることが重要です。

最新の動向を確認し、自社で取り入れられる取り組みを積極的に導入していきましょう。