コロナウィルスの影響で各業界が新規採用に二の足を踏む中、深刻な問題である高齢化の影響を受け人手不足に悩む介護業界。高齢化は各一刻と進行しており、団塊の世代が後期高齢者になる2025年には、国民の3人に1人は65歳以上である「超高齢社会」に突入すると言われています。そんな中、介護業界の人手不足に現在注目されているのが外国人採用です。今では街を見渡しても、外国人労働者の姿は珍しくないものになりました。それは介護業界においても例外ではありません。

そこで今回は介護業界における外国人採用の方法や、就業に当たっての注意点などをご紹介していきます。

介護業界の外国人採用:人手不足が進む要因とは?

コロナウィルスの影響で2020年7月には東京都の有効求人倍率は1.06倍まで落ち込みました。しかし同月の『介護サービスの職業』の有効求人倍率は5.61倍を記録しています。

こちらのデータからも分かる通り、現在介護業界は危機的な人手不足という問題を抱えている状況です。

ではなぜ介護業界は需要に見合った人員が確保できないのでしょうか。

それには大きく分けて2つの理由があります。

採用が困難である

令和元年度の「介護労働実態調査」では、各事業所で人手が不足している原因の第1位は「採用が困難である」で90.0%(前年度89.1%)でした。

つまり離職や選考以前にそもそも求職者の応募が足りていないということです。

その理由には「介護職へのネガティブイメージ」や「賃金の低さ」が挙げられます。

介護の仕事は「きつい・汚い・危険」の3Kと言われる通り、人の命を預かる仕事のためかなり大変なイメージを持つ方も多いです。

しかしその一方で介護職の平均年収は約330万円と全職種の中では比較的低い傾向にあります。

このネガティブなイメージと低い賃金の相乗効果が、介護求人への応募者減少を促しているのです。

人間関係

もう1つの介護業界が人手不足に悩む原因は「人間関係」です。

平成29年度に実施した同調査では、介護職を辞めた理由で一番多かったものは「人間関係に問題があったため」で20.0%でした。

つまり離職した人の中で5分の1の方が、賃金や休日日数ではなく、人間関係を理由に介護職を離れているのです。

介護職では他スタッフはもちろん利用者や利用者の親族など、様々な人と関わるため人間関係によるストレスが溜まってしまいます。

そこに人手不足も加わり、さらにスタッフ同士の関係が悪化することで離職率が高まるという悪循環に陥っているのです。

介護業界で外国人を採用する方法4選

ここまで介護業界が置かれている状況について解説してきましたが、それに合わせて今大きな注目を集めているのが「外国人採用」です。

各事業所で外国人雇用を進める介護施設は年々増加傾向にあり、アンケート調査にて受け入れ施設の78.9%は「今後も受け入れる予定」と回答しており、満足度も非常に高いものとなっています。

そこでここでは介護職で外国人を雇用する4つの方法について具体的に解説します。

EPA

対象国との経済連携の強化を目的に創設された制度で、インドネシア・フィリピン・ベトナムからの受け入れが可能です。

受け入れには「就学コース」と「就労コース」の2種類がありますが、現在は就労コースが主な受け入れルートとなっています。

具体的な方法は、介護福祉士候補者として日本に入国し、3年以上介護施設等で就労・研修した後国家試験を受験という流れです。

在留資格は「特定活動」となるため、受け入れのハードルは多少高めに設定してあります。

在留資格:介護

2016年までは介護福祉士の専門学校に通う留学生が国家試験に合格しても、在留資格がないため、日本で就職は出来ませんでした。

しかし2017年より新たに出来た在留資格が、国家試験に合格した外国人が日本でそのまま働けるようになる「介護」です。

受け入れ方法はこちらも「養成施設ルート」と「実務経験ルート」の2種類で、養成施設ルートでは養成施設で2年以上の学習、実務経験ルートでは介護施設での就労・研修を経て、国家試験を受け合格した後在留資格を「介護」に変更することで、雇用が認められます。

技能実習

本国への技能移転により途上国の発展を目的とした在留資格「技能実習」を持つ外国人を雇用する方法です。

受け入れ後の流れは介護施設等で実習を受けながら入国1年後、3年後、5年後に技能実習評価試験を受験し、帰国後本国での技能活用という流れになります。

目的は技能の持ち帰りになるため、日本で働けるのは最大5年で更新は出来ませんが、国家資格を取得し在留資格を「介護」に変更することで、無期限で就労することも可能となります。

特定技能

2019年に新たに施行された在留資格「特定技能」を取得した外国人を雇用する方法です。

こちらは「人手不足の解消」を目的とした唯一の在留資格となっているため、すでに介護技能評価試験・日本語試験に合格した即戦力となる外国人を雇用することが出来ます。

技能試験・日本語試験に合格した外国人を受け入れ原則5年間の就労となりますが、「技能実習」と同じく、国家試験習得の後在留資格を「介護」に変更することで、無期限での就労が可能です。

介護の職場で外国人を採用する際に気をつけること3選

ここまで介護業界の人手不足の解決に外国人採用がとても重要という話をしてきましたが、やはり異文化での交流になるため注意点もあります。

また外国人労働者はもちろん、環境が大きく変わるのですでに在籍している介護福祉士への気遣いも必要です。

外国人雇用を実行し、しっかりと施設に定着して気持ち良く働けるよう、介護業界の各事業所で外国人雇用を進める際の注意点も把握しておきましょう。

外国人受け入れの意志を共有しておく

外国人労働者の受け入れには、すでに在籍している日本人介護福祉士の協力が必要不可欠になります。

外国人労働者の雇用は労働環境も大きく変化するとても大事な判断になるので、独断で決定するのでは無く、在籍職員としっかりと協議して決断するのが望ましいです。

もし採用担当者の方で現状を省みて、外国人労働者の雇用を決定事項としていても、その判断や意志の共有は在籍職員にしておくとその後の流れもスムーズに進むでしょう。

日本の職場でのルールを基本から教える

上司や同僚に対するあいさつや利用者への接し方など、職場でのルールは国によって異なります。

特に介護は人のお世話をする仕事なので、日本人的気遣いや配慮が色濃く出ることが多いです。

ただ外国人労働者が最初に正しい振る舞いが出来ないのは「ルールを守れない」のではなく「文化の違い」と理解し、利用者への接し方や他職員への「報・連・相」など基本的なルールから教えるようにしましょう。

言葉以外の意思疎通方法で理解を深める

介護の現場に立つ外国人労働者は日本語の試験を合格していて、ある程度の日本語なら理解できるという人が多いです。

しかしやはり母国語とは違い細かいニュアンスや複雑な文章などは100%理解するのは難しいでしょう。

そこでiPadなどのタブレット端末の導入も増えている介護業界では、重要事項や頻出する事例の説明に写真や動画などを言葉と合わせて使用するのが効果的です。

一度実施すれば今後他の外国人労働者を受け入れる時にも役立ちますので、ぜひ外国人労働者雇用の際は一度検討してみて下さい。

介護業での外国人採用のポイントをつかめましたか?

介護業界の人手不足が取り沙汰される中、様々な方法で受け入れ可能な外国人労働者雇用が、あまり浸透していないのが現状です。

確かに介護業界の外国人参入に否定的な意見もあります。

しかし令和元年度に厚生労働省が調査した結果では、外国人労働者の受け入れに肯定的な意見を述べているのは受け入れ済みの事業所が多く、不安感が強い意見を述べているのは受け入れていない事業所が多いことがわかっています。

本記事を読んで外国人採用のポイントが掴めた方は、ぜひ介護業界における人手不足解消のための一歩を踏み出してみて下さい。