現在、外国人の採用を行っている国内企業は数十万社以上に及び、現在も増加傾向にあります。
日本の少子化の影響を受け、飲食店や工事現場、介護施設などさまざまな場所で活躍する外国人労働者の姿を見ない日はないでしょう。

この記事の中では、「外国人採用のメリット」「雇用した後で離職率を上げないためにできること」などを解説いたします。

外国人採用のメリット

まず外国人を採用する企業には、具体的にどのようなメリットがあるのかをお伝えします。

① 若く優秀な人材の確保

日本に来ている外国人労働者は20代、30代がその多くを占めており、非常に若い人材が多いです。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」より

事業の継続を考えるうえでは、職場の若返りのためにも外国人採用は非常に有効であるといえます。

② 訪日外国人への多言語対応

日本語以外の言語、英語、中国語、そのほかの言語を使える従業員を雇うことで、訪日する外国人旅行客に対応することができます。

2023年の訪日外客数は2500万人。コロナ以前の2019年と比較しても、78.6パーセントほどの数値で、急激に需要の回復が進んでいます。日本自体は人口が減少していますが、世界では人口は増えつづけており2023年7月には80億5千万人に到達しました。

海外から日本に来る旅行客に、よりストレスがない買いもの、消費をしてもらえるように、多言語を使用できる人材を雇うことは多くの企業にとって必要なことになるでしょう。

③ 海外進出の足がけ

日本企業の海外現地法人数は、2015年の時点で25,000社ありましたが、2021年の統計でもだいたい同じ数です。

しかしながら、中小企業では越境EC(国境を超えて取引を行うこと)やオンライン展示会など、各分野で容易に他国と取引ができるようになったため、わざわざ海外に拠点を持たないでもやりとりができるようになっています。越境ECの市場規模は日々拡大しており、こうした市場へ入っていきたいと考えているものの、語学的な障壁でコミュニケーションが阻害されていると考えている方もいるのではないでしょうか。

また売上を増やしたいと考えている国のことをもっと理解する上でも、該当する国の方を雇うことは有用であるといえるでしょう。

④ 組織の強化

昨今はダイバーシティー経営の推進が唱えられていますが、外国人採用もその一環です。
外国人の社員から出てくる、「日本人からは浮かびにくい発想を取り入れる」ことで、職場の課題点の改善が進むことで、新しいビジネスチャンスがつかめることも多いです。

また働く日本人にとっても、よりシンプルな日本語で業務を教える必要性が生じるため、業務を「仕組み」にする重要性に気づき、効率化が進む効果もあります。
またこのような議論をする中で本質的なことだけが残り、意味のないことはしなくなるという話もよく聞きます。

あたりまえだと思っていたことが、そうではないと気づくケースも多く、あらためて業務を見直す契機になるようです。

外国人労働者が日本企業で働きたい理由は?

外国人を採用する上では、「なぜ外国人が日本企業で働きたいか」を理解することが大切です。
働く動機を理解し、それに応じた求人票を作成し、人員配置を行うことが優秀な人材を採用し、戦力として定着してもらうことにつながります。

安定した雇用形態、高い賃金

日本の雇用、とくに正社員採用は理由なしに契約が打ち切られることがなく、世界でも類を見ない安定した雇用形態です。
この雇用形態は外国人にとっても魅力的なもので、一度つかんだ正社員雇用はなかなか手放し難く、一生懸命に働く人が多いです。
外国人を雇用する際は、最初はパート・契約社員であっても正社員登用への道を用意しておくといいでしょう。正社員登用の条件を明確にすることで、彼らのモチベーションアップを図ることができます。

また東南アジア、南アメリカ、アフリカ諸国などと比較すると、相対的に日本の最低賃金は高くなるため、外国人労働者の中には母国への送金のために働くひとも多いです。

最近は円安が進行してはいますが、2022年2月の調査によると、フィリピンでの平均年収は「約48万円」で、月収では「約4万円」ほどです。このようなことを知ると、まだまだ日本で働きたいという需要があるのも頷けるでしょう。

▼さらに詳しく知りたい方はこちら

【外国人労働者の懐事情】 理想の年収と今の年収のギャップはどれくらいある? 日本で働く在留外国人の年収や貯金について

日本のサービスや技術を学べる

日本の小売業・飲食業の顧客サービスや、工場の技術は世界的に見ても高いレベルにあります。
こういった丁寧な仕事を肌で学び、母国で事業を起こしたり、さらに高賃金を得られる仕事に就くことを目標にしている方も多いです。

もちろん日本での安全な暮らしが好きになり、地域や会社に溶けこむ方も多いです。
高い専門性がある、複雑な仕事がやりたいという方には、どんどん重要な仕事を渡して日本人同様に育てるといいのではないでしょうか。

やはり「面白い」「発見がある」という気持ちになれば、仕事にも熱心に取り組んでくれますし、離職率も下げることができるでしょう。

福利厚生の充実

日本企業の福利厚生は高い水準にあります。
健康保険や社会保険といった保険制度や、定期的な健康診断の実施、交通費の支給は外国人が安心して働くことができる環境を作ります。

また外国人にとって、住宅の契約がネックになることは多いですので、社宅や社員寮も喜ばれることが多いです。
車内にこれらの資源がある場合は、ぜひ外国人採用に積極的に活用しましょう。

外国人の離職率を下げるにはどうすればいい?

自国で働くよりも多くの賃金を稼げると考えて、高いモチベーションでいる方も多いですが、日本の企業で働き始めると実際には想定と違っていると感じる方もいます。

離職率を上げてしまう原因のひとつとなるのが、言語の違いが障壁となることによってコミュニケーションがうまくいかないことです。日本人同士でも意思疎通がうまくいかなかったり、人間関係の問題には事欠きません。母語が異なる相手なら、なおさらこの点をしっかりと考える必要があります。

では実際には、外国人採用を成功させている企業は、どのような方法で離職率を下げているのでしょうか。

① 日本語レベルが高いリーダー的な役割のポストを用意

ひとり日本語もできて、べつの言語もできる人材が外国人の中に、細かな意思疎通をする仕組みを作ることができます。
相手が言ったことを拡大解釈してしまうことは、日本人同士でもよくありますが、こうしたことを解消できるようにリーダーの立ち位置になる方をしっかりと育てて、登用していくことが必要となるでしょう。

② 翻訳ツールを使う

DeepLなど便利に使える翻訳ツールも多いです。こうしたツールに頼りすぎるのもよくない面もありますが、「どうしてもこれは正確に伝える必要がある」という場合には翻訳ツールをしっかり活用しましょう。

Larkなどの同時通訳機能がついたソフトウェアを使っている会社もあるようです。

③ やさしい日本語のトレーニング

やさしい日本語は、日本語を母語としない人にも、わかりやすく文法や語彙を調整した日本語のこと。メルカリのようなグローバルな人材が多く働く企業でも、このようなコミュニケーションがおすすめされています。

やさしい日本語の特徴としては、簡単にまとめると以下のようになります。

・短くはっきり最後までいう

・あいまいな表現を使わない(という感じ、〜みたいな、など)

・尊敬語、謙譲語は使わな、「です・ます」を使う

・動作の視点に注意、誰が何をするかはっきりいう(主語をはっきり)

・二重否定を使わない(しないわけでもない、わからないこともない、など)

・擬音語、凝態語は、使わない(ぐちゃぐちゃ、ふらふら、など)

さいごに

今後は多くの業界で外国人労働者が増えてきますが、コミュニケーションの仕方や常識というものも、今後10年で大きく変わっていくことでしょう。今回ご紹介させていただいたことを意識して、多様な国籍の方といっしょに働く会社づくりをしてみてはいかがでしょう。