日本における外国人の在留資格「永住者」(以下「永住権」)取得は右肩上がりですが、それと同時に問題となるのが永住権の取消。
永住権は一度取得すれば無条件でずっと在留できると思われがちですが、場合によっては取り消されることもあります。

そこで今回は永住権の取消をケースべつにご紹介します。
また永住権が取り消されてしまったあとに再取得は可能なのか についても解説したいと思います。

こんなときに永住権は取り消される!? ケースべつに紹介!

永住権取得の最大のメリットは在留資格更新手続きが不要となり、在留期間も制限されなくなること。そのため永住権取消は在留外国人にとっては非常に大きなことです。

永住権は取得することが難しい?!

◇永住権取得のための条件

  1. 素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  3. その者の永住が日本国の利益になると認められること

条件を満たすのは「日本の法律を守り」「地域住民として社会に迷惑をかけない生活を営んでいて」「有する資産や技能から将来的に安定した生活が見込める」人です。
また「10年以上在留している」こと、「刑罰を受けていないこと」なども条件に含まれます。

さらに現在の在留資格が最長の在留期間(法務省ガイドランでは3年)であることも条件のひとつ。
ただし永住者や特別永住者の配偶者、定住者、難民認定を受けた方、日本での功績が認められた人などは、原則10年在留の例外となります。

ではつぎに「永住権の取消」をケースごとに紹介いたします。

ケース1:日本国外へ出国した

永住権を持つ人が「再入国許可(みなし再入国許可を含)」を得ずに日本国外へ出国すると権利は無効となります。
なぜなら永住権は日本に在留するための資格のひとつで、国外へ出ると必要はなくなるためです。
このケースはかなり多くなっていますので、出国する際には注意しましょう。

日本国外へ出てしまった場合、再入国するには入国審査などを経て、ふたたび在留資格を取得する必要があります。
しかし毎回この手続きをするのは、外国人だけでなく出入国在留管理庁にとっても大きな負担であるため、「みなし再入国許可」と「再入国許可」の制度を設けています。

「みなし再入国許可」とは、永住権保持者が1年以内に再入国するときに再入国許可の取得を省くもの。
再入国出国用記録(EDカード)にチェックを入れるだけです。ただし1年以内に再入国しないと永住権は消滅します。

再入国出国用EDカード

出典元:法務省 入国管理局

一方で再入国許可は「1年以上再入国の予定がない人が受けるもの」で、事前に住居地を管轄する出入国在留管理庁で申請する必要があります。
こちらも再入国許可の期間に再入国しないと永住権は消滅してしまいます。

ケース2:引っ越し後に届け出を忘れた

永住権取得後に引っ越しをする場合、転居後14日以内に新住居地の届け出を提出する必要があります。
もし14日を超えても転出・転入届が提出されなかったり、虚偽の届けが出されたりした場合には、在留資格の取消事由に該当するため、永住権の取消になる可能性があります。

引っ越しをする際には、事前に「やらなければならないこと」をリスト化しておきましょう。

ケース3:虚偽の申告をした

在留資格取得からいま現在にいたるまでに、「虚偽の申請」や「書類の偽造」などが判明した場合、永住権取消の可能性は高いです。

これは在留資格の取得や変更、在留期間などの更新、永住権取得など、在留資格に関するすべてが含まれます。
たとえば学歴・経歴詐称などが後々で発覚すると、永住権が取り消されます。また虚偽の申請は永住権取消だけでなく「在留資格等不正取得罪」となる場合もあります。

ケース4:罪を犯した

永住権保持者が日本で大きな罪を犯した場合、退去強制の可能性があります
退去強制とは強制的に日本国外に出国されることで、大きな罪とは「刑罰法令違反」や「暴力主義的破壊活動」などです。

当然ながら永住権も取り消されます。

退去強制に該当する可能性があるのは以下のものです。

  • 刑事罰で懲役または禁錮に処せられた
  • 麻薬および向精神薬取締役法違反
  • 売春防止法違反

「飲酒運転」や「速度違反」などの行政処分は永住権取消の対象外です。しかし飲酒運転による事故で死傷させた場合などは、起訴・裁判から罰金や懲役または禁錮刑などに処されるため、退去強制になる可能性はあります。

ケース5: 永住権をとった後に離婚した

日本人と結婚した外国人は「日本人の配偶者等」という在留資格になります。しかしこの在留資格は日本人との結婚の継続が条件となるため、離婚あるいは死別した場合には在留資格の更新はできません。

一方で「永住権」は日本人の配偶者と離婚したり、死別しても取り消されることはありません
ただし先述のケースに当てはまる場合は取消になります。注意しましょう。

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永住権が取り消されたらどうすればいい?

永住権が取り消されるまでの流れ

◇永住権が取り消されるまでの流れ

  1. 法務大臣が在留資格の取消を行う場合、まず出入国在留管理庁から「意見聴取通知書」が送付される(緊急の場合は口頭の場合もあり)
  2. 本人あるいは代理人が「意見聴取通知書」に記載された日時に指定場所に出頭。陳述・証拠提出を行う。正当な理由がなく欠席した場合、在留資格が取り消されることがある。出頭日は調整可能。
  3. 取消決定後、「在留資格取消通知書」が送付される
  4. 取消通知書には30日以内で出国日が指定され、行動範囲等の制限や条件が提示される
  5. 指定の期間内に出国する

退去強制手続及びの出国命令手続きの流れ

出典:出入国在留管理庁 「退去強制手続き及びの出国命令手続きの流れ

「意見聴取通知書」が送られてきたときは記載された取消事由を確認し、心当たりがない場合は該当しないことを説明・立証しなければなりません。
また事由に該当しても、かならず在留資格が取り消されるわけではありません。

事由に該当するに至った理由、反省の弁、日本に在留する必要性などが記された資料を提出し、資格を取り消さないように要望したり、在留特別許可を要望したりすることは可能です。

永住権の再取得は可能?

永住権を取り消されたあとで再取得することは可能です。
ただし特例に該当しない限り、ふたたび在留資格を取得して10年在留などの要件をクリアする必要があります。

また退去強制や出国命令によって出国した人は、一定期間は日本へ再入国できません
さらに日本国内外で懲役・禁錮刑を受けたり、違法薬物に関する罪等に処されたりした人は日本への再上陸が拒否されます。

このような人たちは永住権の再取得は不可能になるでしょう。

永住権の取消についての理解が深まりましたか?

日本に来る外国人が増えて永住権の申請も増えつづける一方で、「永住権の取消」も増えて問題となっています。
永住権は取得要件も厳しいうえに時間もかかります。永住権を取り消されると簡単には再取得できません。申請の際はもちろんのこと、取得後も要所要所で注意して生活しましょう。

また永住権を持っている外国人労働者を雇っている企業は、彼らが資格を失わないよう気を配りましょう。社内でリマインドする制度などを作って、しっかりと運用していくことも大切かもしれません。