在留中国人の数はピーク時よりも減少傾向にありますが、その数としては現在においてもトップです。
実際に在留外国人の中でも、中国人が占める割合は4分の1程度(およそ75万人)で、さらに中国人留学生の約6割は「日本で就職したい」「日本企業で働きたい」という希望を持って日々勉強しています。

日本では労働人口の減少にともなって、多くの企業が中国人の採用に力を入れ始めています。
しかし彼らの特徴を十分に理解できていないため、採用活動に苦労している企業さまもあるのではないでしょうか? そこで今回は中国人採用を考えている企業の人事採用者のために、中国人の特徴や雇用時の注意点についてご紹介します。

中国人の日本での就職は難しい?

日本に住む中国人留学生の約6割が日本での就職を希望していますが、うまくいかないケースが見受けられます。
日本の就職活動の方法や情報収集が難しいなど、希望通りの業界に就職できず、中国に帰ってしまう留学生もいます。

では、なぜミスマッチが起きてしまうのでしょうか? 早速、問題点を順番に見ていきましょう!

中国人は日本での就職活動に苦戦中?!

中国人が日本で就職するのが難しいのはなぜでしょう?
その主要な理由のひとつとして、中国人の働き方と日本人の求める働き方に大きな隔たりがあるからです。

中国人は「仕事よりプライベートを重視」「職場では対等な関係でいたい」「結果が同じなら手段を選ばない」など、チームワークを重視するより、むしろ個人スキルスキルアップを重視します。
逆に日本人はチームワークを大切にし、序列を重んじ、正当な方法で確実に結果を出すことを大事にする傾向にあります。

日本と中国の就職活動の違いはどんなものでしょう? 代表的なものに以下の2点があります。

◎重視するポイント

日本では入社後の可能性を感じて採用するため、コミュニケーションや一般常識などOJTを活用していますが、中国では即戦力が優先採用条件であるため「仕事経験」が重要視されます。

◎インターンの存在

日本ではインターンで内定がもらえたり、一次試験の免除の優遇がある企業もありますが、中国では少し事情が違います。
人気分野を専攻していない学生は知識や経験がないため、働くうえでの強みを持っていないため、自分の能力を底上げするためにインターンで仕事経験を積むことが一般的。

それぞれの国で就職活動の違いがあるため、戸惑いを感じている中国人が多いです。

中国人が日本で就職できない原因は企業側にある?

日本では多くの企業が外国人雇用に積極的な姿勢をとっています。
就職活動を行っている中国人は、日本企業に就職することは難しいと感じています。
大きな原因のひとつとして、日本企業が中国人のビジネススキルよりも日本語の理解能力に重点をおいているためでしょう。

多くの日本企業は日本語能力の高い中国人の雇用を考え、幅広いビジネス場面で日本語を理解することができる、日本語能力「N1レベル」を求めています
しかしこのN1試験は難易度が非常に高く、認定率は30%前後。言語能力が高い中国人の中には、たとえN1を持っていなくても高い日本語技術を保有しています。

企業側も業務にどれほどの言語レベルが必要かよく吟味して、面接などでその能力を測るといいかもしれません。

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中国の労働問題の実態を解説:日本に就職・留学を希望する人が多いのはなぜ?

中国の日本人留学生と現地大学生が抱えている課題とは? 中国人留学生を雇いたい方も知っておきたい現状

これらのレポートの中では、弊社でインターンをしている中国現地の大学に4年間留学した学生の目から見た、中国の労働問題などが収録されています。一次情報も豊富に入った内容になっているので、中国人採用を考えている方には一読をおすすめいたします。

どれくらいの中国人が日本企業に就職している?

就職を理由にして、日本に留学する外国人の数は増加しています。
新型コロナウイルスを原因として割合が減った年もありましたが、多くの中国人が卒業後には「日本で働く」という選択をしています。
令和元年では、11,580人の学生が就職で必要になる「在留資格変更許可申請」をしています。

大学側も増加する外国人留学生に対応するために専用の窓口を設置し、留学生専用のジョブフェアを開催して、留学生の就職を後押ししています。

参考「令和元年における留学生の日本企業等への就職状況について

中国人採用の注意点は?

中国人を採用する企業は増えていますが、中国人の性格について把握している企業は少ないのが現状でしょう。

採用しても「戦力にならない」「仕事の効率が悪い」と感じる企業が多いのは、中国人を理解していないことが原因だと考えられます。ここでは日本の企業が中国人を採用する際に知っておくことを紹介いたします。

中国人はカタチよりも結果!

やり方が多少雑であっても、結果が出せるなら手段は選ばないのが中国人のやり方です。

中国では他国よりも「お金を稼ぐこと」が成功の基準として強く浸透しています。
お金を稼ぐ際には効率を求めています。開発費用と時間を十分にかけるより、「最小限の費用と時間で売れる商品を作りたい」と考える方も多いです。

それゆえにすでに売れているもの、市場でニーズがあるものを模倣する、という考え方も一般的。
「とにかく結果にこだわる国民性」であることを意識できるといいでしょう。

中国人は仕事上ではとても合理的!

中国人には仕事を合理的に考えている人が多く「与えられた仕事を決められた時間に終わらせること」を重視します。
一方で日本人は「残業は仕方がないことだ」と考える傾向があり、この姿は中国人から見たら理解しにくいように映っているかもしれません。

自分のミッション以外のことも気にする日本人の性格は、中国人には理解しづらいでしょう。しかしお金を稼ぐという点だけを見れば、中国人の考え方は非常に合理的です。

中国人は利益につながらない行動は、基本的にムダと考える傾向があります。

中国人はフラットな関係の方が好き

同じアジア人ですが、中国は日本や韓国と比べると、上司部下間の関係はフラットであることが多いようです。

率直に意見を言い合うことでいい関係を作ることができ、業務を円滑に行うことができるのはいい点でしょう。

現在では日本の企業であったとしても、生産されたものは世界のマーケットで戦うことを余儀なくされます。日本では上司の顔色を伺って新しいことが言えない中で、中国が経済力をつけてきたことにはこの比較的フラットな文化が関係しているといえるかもしれません。

言語能力に偏りすぎた採用はいまいち?

日本企業は学生の日本語がうまいかどうかで採用を決める傾向があります。しかし日本語がうまいからといって、コミュニケーション能力もすぐれているかというとそうともいえません。

面接時に、もし日本語が得意ではない就活生がいたとしても、「笑顔が多い」「愛嬌がある」「事業に対して熱意がある」など語学以外の面も評価して採用を行えるといいでしょう。

採用後の届け出方法は?

企業は就職活動で訪れた中国人を採用した場合、「氏名」や「在留資格」などをハローワークに対して届け出をしなければいけません。

採用した中国人が雇用保険の対象になる場合は「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
このときに喪失届の備考欄に「在留資格」「在留期限」「国籍」を記入してから、提出してください。

雇用保険被保険者資格取得届

画像引用 【図解】これだけでOK!雇用保険の被保険者資格取得届の記入例と書き方

もし雇用保険対象外の場合には、雇用開始、離職の翌月末日までにハローワークに「外国人雇用状況書」を提出しなければいけません。
また添付書類には、「在留カードかパスポート」「資格外活動許可証か就労資格証明書」が必要となります。

日本で就職する中国人の特徴について詳しくなりましたか?

日本企業が中国人を採用する場合、中国人の特徴を理解する必要があります。
中国人にムリやり日本のやり方を押し付けてはいけません。大切なことは、おたがいに協力しながら仕事を成功させることです。

日本で就職活動を行っている中国人を採用し、会社の戦力として連携していくことが、企業が発展していくことへのいちばんの近道といえるでしょう。