ここ数年、大きな課題となっている国内での人口減少問題。2018年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人で、出生率にすると1.42と過去最低を更新しました。日本は3年連続で100万人割れを記録しており、ここにきて「少子化=人口減少」が明らかに目に見える形で表れてきています。
少子高齢化によって労働力人口は大幅に減少する見通しで、人材確保に向けての対策が急務とされているのです。そこでこの記事では、労働人口の減少とその対策について解説します。
目次
不安定経済は労働力人口減少のせい!?

日本は、2000年代後半もしくは2010年代以降、社会において出生数よりも死亡数の方が多く、継続して人口が減少していく人口減少社会に突入しました。人口減少社会の影響を受けて、日本は1999年から労働力人口が減少に転じており、人口が減少することで日本経済の成長率が減少すると危惧されています。
また、労働力人口の減少のみならず、人口構成の変化も日本経済の成長に大きな影響を与えるとされています。現在の財政や社会保障制度を持続するとなれば、人口の急減や超高齢化社会の下では、社会保障負担の増大を現役の働き手の世代が負担し続けなければなりません。負担と受益の関係が大きく崩れると、経済へ悪影響を及ぼしかねないと懸念されています。
世の中の仕組みや制度、政策は、時代の状況にあわせて見直されていくものではありますが、人口の規模や構成といった大きな構造の急激な変化は、時に混乱を招く恐れもあります。変化の過程で、世の中の仕組みが柔軟に変わっていかない場合には、さまざまな歪みが生ずることになるため、問題です。逆に急速に仕組みが変わっていく際には、将来の展望を描きにくくなってしまいます。いずれの場合であっても、日本経済が安定して持続的に経済活動を行っていく上ではマイナスです。
以上のように、人口急減や高齢化は、日本経済へ与える影響が非常に大きいと考えられています。人口減少、超高齢化時代を迎える中でも経済発展を持続するためには、過去の事例にとらわれず、新しい発想で対策を講じる必要があると言えます。
今後の労働力市場はこうなる!
労働政策研究・研修機構(JILPT)が集計した労働力人口の推移によると、日本が人口減少社会に転じた2000年頃から、労働力人口は減少の一途をたどっています。2030年には6180万人にまで落ち込むとの予測がたてられている中、注目すべきは各年齢区分の割合です。2012年から60歳以上の労働人口は増加しており、30歳~59歳の現役世代と15歳~29歳の若年層においては減少していることから、主力世代の労働力人口の低下は深刻な状況と言わざるをえません。
今後の労働力市場は、政府の働き方改革の後押しをうけて高齢者世代と主婦層が労働市場に参入することから、大幅な低下は免れるでしょう。しかし、少子高齢化に伴う人口減少は免れない状況で、長期的には労働力人口は大幅に減少すると考えられています。

画像引用元:BizHint ホームページ
産業別に見る雇用の現状とは
日本経済は景気回復の長期化により雇用・所得環境は改善を続け、人手不足感は四半世紀ぶりの高水準となっています。

画像引用元:内閣府 ホームページ
2014 年頃を境に労働力不足が著しく増加しており、非製造業が示す深刻な人手不足の状況は、製造業からサービス業へと産業構造が変化していることを意味しているのです。また、産業構造の変化を受けて、日本全体の就業者数の構造も大きく変化しました。製造業の就業者数は緩やかな減少傾向にある一方で、医療・福祉の就業者数は一貫して増加を続けており、2002 年時点と比較するとほぼ倍増しています。

画像引用元:小規模企業白書 2017
人生100年時代を迎える中、長生きが珍しくなくなった時代背景も重なり、医療・福祉産業は今後も右肩上がりを続ける見通しです。このことから、現代における日本の就業構造は、医療・福祉産業の需要割合の高まりがうかがえます。また、電気・ガス・水道や金融業などのサービス業、建設業や製造業は変わらず高い水準で推移しており、産業による偏りがあることも注視すべき内容です。
労働力人口減少の対策2選をご紹介!

全体の人口が減少していることから労働力人口の減少だけを回避することは困難です。労働力人口が減少していく中で、企業が現状の業務を遂行し成長を続けるためには、企業体制の見直しが課題でしょう。ここでは、機械化を導入し生産性を高めることや年齢や性別、国籍での判断によらない雇用対策に焦点を絞り解説します。
労働力・人手不足対策その1:生産性を高める
少ない労働力人口でも成果をあげるためには、業務削減できるところは改善し、生産性を高める取り組みが必要となるでしょう。具体的には、機械化できる業務は順次移行することや、賃金を含め社員の福利厚生や労働環境を整えることで、精度の高い仕事をしてもらうことが有効手段としてあげられています。
この2点は共に、近年問題視されている長時間労働と密接に関係しており、議論されている点です。膨大な量の業務により勤務時間は長くなり、疲労感が社員の労働意欲を減退させ、ミスや離職など負の連鎖を招く要因とされています。
政府の働き方改革の一環としても、社員の業務負担を軽減し長時間労働にならざるを得ない環境の改善を図ることは避けて通れない課題です。支払いが不要になった残業代を賃金に還元するなどして社員のモチベーションを向上させることは、質の高い仕事ぶりに繋がり、生産性を高めるためには必要とされています。
労働力・人手不足対策その2:雇用を見直す

少子高齢化により労働力人口が減少する中で、日本経済が持続的に成長を続けるためには個々人が年齢や性別、国籍などではなく能力や適性に応じて活躍の場を得られることが重要です。労働力・人手不足対策として雇用の見直しが迫られています。
具体的な例の1つ目としては、女性の積極採用及び働きやすい職場環境の整備です。育児休業の取得を3年に引き延ばすことや時短勤務、在宅ワークを取り入れるなどの対策は、出産・育児による女性の離職対策に一定の成果を期待できるでしょう。
2つ目の対策としては、定年以降の労働者を年齢で判断するのではなく能力にみあった職種に積極的に採用することです。高齢者が今まで働いて来た経験やスキルは若手社員の手本となり、個々人の能力向上に繋がるというメリットがあります。
3つ目の対策として、外国人の採用を試みることが挙げられています。この流れを受けて、2018年11月27日に出入国管理法(入管法)改正案が衆議院で可決されました。深刻な人手不足を解決するには、一定の外国人労働者を受け入れる必要に迫られているのです。グローバル化を検討している企業にとっては、海外進出したい国の国籍を持つ者もしくは出身者を雇うことで、企業と進出先の橋渡し役となることを期待できます。
労働力人口減少に向けた対策はできていますか?

労働力人口が長期的には減少していく中、企業が業績を維持するためには、一人あたりの労働生産性を高めることが必要です。生産性を向上させることは賃金の向上や、結果的には日本経済の持続的な成長にもつながります。
逆説的に考えると、労働力人口の減少が見込まれるなかで生産性向上や雇用対策に遅れをとれば、企業の業績が伸び悩み経済規模は縮小せざるを得ません。少子高齢化による人手不足が明るみになり、現実的な対策が迫られています。企業の雇用形態や職場環境、企業体質は急な変化に対応するのは困難であり、人材育成に関しても一定の時間を要することから、労働環境や雇用の見直しを焦点に早急な対策が求められているのです。