人手不足が深刻な社会問題とされる中、政府は外国人労働者の受け入れに積極的な姿勢を示しています。政府が前向きな政策をとる中、今では街のコンビニエンスストアや店舗などで働く外国人をみかけるのは珍しいことではなくなりました。しかし、いざ外国人労働者を採用しようと思っても、賃金や源泉徴収など給与関係の処理がわからず、戸惑うことが多いのも実状です。

2019年4月に改正入管法が施行されたことを受けて、新在留資格「特定技能」が創設されるなど、今後ますます外国人労働者は増える見通しです。そこでこの記事では、外国人を雇用する際の賃金設定や注意事項、源泉徴収に関して解説します。

外国人の給与:最低賃金法は適用?

最低賃金法とは、事業主が労働者に対して最低賃金額以上の給与支払いを義務付ける制度であり、労働者が外国人であっても適用されます。法律で定められた最低賃金以下で働かせると事業者が罰せられるなどのペナルティを科せられるため、正しく理解することが大切です。ここでは、日本で働く外国人労働者への給与支払いに関して解説します。

最低賃金以下で働かせるのはNG!

外国人労働者であっても、日本国内で就労する限り労働基準法・労働安全衛生法・最低賃金法などの労働保護法は国籍に関係なく適用されます。労働保護法は、たとえ不法就労の外国人であっても、日本国内で雇用される労働者であればその権利が保障されるほど、順守しなければならない法律です。2019年4月に施行された改正入管法に絡んで話題となっている「技能実習生」に関しても、比較的 ” 安い労働力 ” のように誤解されがちですが、技能実習生にも最低賃金が適用されており法律に基づく雇用をしなければなりません。最低賃金法の要点を以下にまとめました。

<最低賃金法の要点>

  • 最低賃金は都道府県ごとに違いがある
  • 地域別最低賃金は毎年10月1日に改定される
  • 月給制の場合、長時間労働は最低賃金を下回る可能性もある
  • 業種によっては特定最低賃金の適応を受ける場合がある

そのつもりがなくても、法律で定められた最低賃金以下で働かせることは違法となり、50万円以下の罰金を科せられるなどの罰則があります。また、最低賃金法違反によるダメージは罰金だけではありません。「最低賃金以下で働かせていた」という悪いイメージが世間に広がれば、企業のイメージダウンにつながり、求人をかけても労働希望者が集まらないという損害も考えられます。毎年更新される最低賃金の把握や、月給制の場合は長時間労働の影響で1時間当たりの賃金が最低賃金を下回っていないかなどの確認には細心の注意を払いましょう。

業種によっては最低賃金が割増に?

業種によっては最低賃金が割増しとなる、特定最低賃金の適用を受ける場合もあります。これは、特別なスキルを必要とする仕事に就く人材に対して、その分の賃金割増しを企業に約束させる制度です。具体的な例を以下にまとめました。

<特定最低賃金適用の業種>

  • 電子機器の組立業
  • 鉄鋼業
  • 自動車小売業

自身の会社が特定最低賃金の適用業種である場合には、支払い給与額に間違いがないか注意しましょう。なぜなら、適用対象の産業であるにも関わらず、通常の地域別最低賃金のみを支払っていた場合は、最低賃金法に違反したとみなされるからです。

外国人の給与:源泉徴収はどうしたらいい?

外国人 驚く顔

外国人を雇用する場合も支払った給与には所得税が課税され、源泉徴収が必要となります。源泉徴収については、その外国人労働者が所得税法上の「居住者」か「非居住者」のどちらに該当するかによって計算が異なります。

まずは居住形態をチェック!

大きく分けて「居住者」と「非居住者」の2つに分類されます。居住者の方はさらに区分が存在し、非永住者と永住者に分けられ所得税の課税範囲が異なります。

  • 居住者

日本国内に住所(生活拠点となる住所)がある、もしくは現在まで1年以上継続して居住する場所がある方のこと。居住者である外国人労働者の場合、給与からの源泉徴収と年末調整を行うなど日本人従業員と変わりはありません。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、給与を毎月支払うケースでは「源泉徴収税額表(月額表)」の甲欄を使用します。また、住民税も課税されるので、給与からの特別徴収が必要となります。

  • 非居住者

居住者に該当しない方のこと。非居住者に該当する外国人労働者の場合、給与からの源泉徴収のみとなります。(年末調整は不要)
給与の支払いときに一律20.42%(復興特別法人税を含む)税率で源泉徴収することのみで課税関係は終了します。住民税は、課税されません。ただし、日本での就労を目的として来日する外国人は、原則居住者と推定されます。労働契約期間が1年未満であるなど、来日の際に在留期間が1年未満であることが明らかな場合、非居住者と認定されてしまいます。

参考資料:http://www.onoderakaikei.com/zeimu/280831zeimu/gaikokuzinnroudousixya.html

Expatsの給与計算方法

エクスパッツ(Expats)とは一般的に、海外の支店や関係会社などに所属したまま日本に派遣される労働者のことをいいます。長期にわたる派遣の場合は日本の税法や社会保険法が適用されますが、本来はエクスパッツ負担の社会保険料・所得税・住民税などを日本の会社が負担するケースが多いのが実情です。この場合、会社が負担するエクスパッツの社会保険料額等を給与として処理し、さらに経済的利益にあたるため課税処理を行わなければなりません。

その算出に用いられている給与計算方法が「グロスアップ計算」です。給与は手取保障契約(ネット契約)となるので、所得税等や社会保険料を何度もシミュレーションして手取額に合うように逆算し、支給額を計算することで、給与計算は非常に複雑なものとなります。実務では、給与計算ソフトなどのツールの活用が必須です。

また、グロスアップ計算を行う時期に関してですが、手取保障契約ということがポイントになっています。手取額を確保するためには、社会保険料などの控除額の変動があった際には、その都度グロスアップ計算を行い手取額の確保をしなければなりません。さらに残業代が支給される場合は毎月の給与はまちまちで、所得税・雇用保険料なども変動してしまうため、毎月グロスアップ計算を行う必要があります。その他、定期的に計算を行う時期として主に以下のようなケースがあげられます。

<グロスアップ計算を行う時期>

  • 4月:基本給等昇給、雇用保険料率・健康保険料率・介護保険料率の改定
  • 6月:住民税(初月)
  • 7月:住民税(2ヶ月目以降)・賞与計算
  • 8月:4月昇給に伴う随時改定(月変)による社会保険料の変更
  • 10月:定時決定(算定)による社会保険料の変更、厚生年金保険料率の改定
  • 12月:賞与計算

外国人の給与:合意は必須!

日本では求人情報の給与欄には総支給額が書かれていることが多いですが、日本人は「総支給額=手取額」ではないことを知っているため、そのことをあえて説明する企業はありません。しかし外国人労働者は、日本の税金や社会保障制度を知らない場合が多いため、その結果トラブルになってしまうことがあります。外国人労働者を雇用する場合は、総支給額と手取り額との違いをしっかり説明して合意を得ることが大切です。

事前の合意でトラブルを防ぐ

外国人は給与から何が控除されるかわからないため、実際の手取り額が少ないことがトラブルの原因になりかねません。日本の税制の説明と事前の合意が重要です。

<事前説明のポイント>

  • 天引きされる理由
  • 皆が平等に天引きされていること
  • 差引額は一定でなく所得に応じて変動すること

事前に合意を得なかったがために、「聞いていた給与の金額よりも少ない」と裁判沙汰になったり摘発されたりする可能性があります。お互いに信頼し合った労使関係を築くためにも、国と文化が違う外国人労働者の採用に際しては、日本の給与・税金システムをきちんと説明してトラブルを未然に防ぐことが大切です。

外国人への給与:電子マネーによる支払いが増える?!

ビットコインとパソコン

2018年12月、政府は給与の支払いに電子マネーを解禁する方針を固めました。背景には、「外国人労働者の受け入れ」と「キャッシュレス社会の推進」があります。電子マネー化が実現すると、企業はスマートフォンの決済アプリなどを利用して給与の支払いができるようになり、銀行口座の開設に制約がある外国人労働者の給与の支払いが円滑化すると期待しています。しかし、解決しなければいけない課題もたくさんあり、早期解禁に向けて議論が活発化しています。

外国人の給与について詳しくなりましたか?

電気と給与

最近では、日本で働く外国人労働者も増えてきました。外国人を雇用する際は、給与支払いに関して日本人とは違うしくみが適用されるため、理解を深めてお互いに信頼し合える関係を築くことが理想的です。特に、①最低賃金を下回る給与の支払いは違法となること、②居住形態の違いで課税範囲が異なること、③総支給額=手取額とはならないことの事前説明の3つは抑えておくべき大切なポイントとなります。外国人労働者は日本の税制に詳しくないことを前提に、前述したポイントの説明と合意を得て、後々のトラブルは未然に防ぎましょう。

また、政府は外国人労働者の給与支払いに電子マネーの導入も視野に入れて検討するなど、より円滑な雇用促進に向けて新たな局面を迎えています。今後、ますます増える傾向にある外国人労働者。電子マネーによる給与支払いが可能になれば、雇用の効率化が期待されることから動向が注目されています。